先日来世界の注目を浴びている愚行がある。北朝鮮兵のロシアへの派遣である。韓国情報機関・国家情報院は先月18日、北朝鮮が特殊部隊約1万2千人の派遣を決めたとの情報を入手した。そして30日ゼレンスキー・ウクライナ大統領がそれを裏付けるように北朝鮮兵約1万2千人が派遣され、ロシアで訓練を受けていることに危機感を表明した。そしてアメリカ政府も約8千人の北朝鮮兵がウクライナに隣接するロシア・クルスク州に到着し、ロシア軍から訓練を受けていると発表した。そもそもこの自国兵士を他国間の戦争の渦中へ送り込む自殺作戦は、金正恩・総書記の考えであり侵攻開始当初から「ロシア軍を強力に支援するよう指示した」と北朝鮮外相が明かした。
金正恩の行うことは、とても常人の行為とは信じられない。派遣された兵士たちの内、何人かが亡くなるとすればその償いはどう行うのだろうか。終生遺族から恨み骨髄の怒りを買うだろう。これ以外に国際法により禁じられている核開発に注力し、ミサイルを他国の迷惑なぞお構いなしに発射して国内外へ甚大な迷惑をかけている。不幸にして北朝鮮はこのような苦労知らずの暴君をトップにいただいた無法国家に転落してしまった。常軌を逸しているとしか思えない。一方で、このように北朝鮮のような貧しい国家を当てにして利用しようとするロシアのずる賢いやり方も糾弾すべきである。
他に世界の人びとの人心を寒からしめているのが、中東レバノンに居住する難民である。これもイスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への空爆が拡大して今では難民へ降りかかっている。レバノン南部に拠点を置くイスラム教シーア派組織ヒズボラに対するイスラエル軍による激しい軍事作戦により、シリア内戦を逃れた難民らが苦境に陥っている。レバノンの全人口530万人の内その2割強の120万人がシリア難民と言われている。その難民たちにとって身に危険が迫って来たことにより、またシリアへ戻る人が出て来た。無事に母国シリアへ戻っても元の自宅は激しい攻撃を受けて平穏に暮らせる空気ではない。
元々ハマスの襲撃から始まった戦争ではあるが、今ではイスラエルの戦闘的な行動が事態を一層過激にしている。イスラエルとガザ地区、或いはハマスとの対立が解消しない限りイスラエル軍による攻撃は止むことはない。そして、それが多くの難民を悲惨な状態に追いやっているのである。イスラエルの攻撃的な姿勢はイランに対しても向けられている。両国の間で戦争の火ぶたが切られないことを願うばかりである。
それらの残酷、かつ理不尽な状況に比べれば、先進国内には表面的にはこれほど悲惨な事件はあまりない。だが、怖いのはその陰に「大虐殺行為」の可能性が予想されることである。道を間違えれば、大惨事に発展することが懸念される。
それは、3日後のアメリカ大統領選の結果、トランプ前大統領が復活当選した場合である。見境のないトランプ氏の行動により、一層イスラエルへの支援が増大し、イスラエルは増長し、周辺のアラブ諸国への攻撃の手を伸ばすのではないだろうか。更にひとつ間違えて、ロシアのプーチン大統領と対立するようにでもなれば、核戦争へ発展する恐れがあることである。人間というのは、昔も今も愚かさにおいては変わりない。