気になっていることが2つある。ひとつは、昨日アメリカ・テキサス州の教会内で起きた銃乱射事件に伴って持ち上がった銃規制に反対の声が挙がったことである。小さな村の教会内で銃を乱射され、多数の犠牲者を生んだ一方で、住民が自らの銃で応酬し犯人に命中させて犯人を自決させる結果となった。これについて銃規制に反対する住民が、自分たちが銃で応酬出来たから犯人を追い返すことが出来て、被害の拡大を防げたから銃は必要だと言っている。
確かに人口が少ない地域では、治安上不安があるので自己防衛のために銃を備えておきたいとの気持ちは理解出来ないこともない。だが、そもそも犯人が銃を持てないようにすれば、事件発生や犠牲者はそのこと自体で防止出来ることであり、銃の所有自体を禁止した方が問題解決に直結するのではないだろうか。
アメリカでは歴史的に西部開拓時代の空気を継いでいるところも多く、自らの身は自らが守るとの伝統的な雰囲気が強い。そういう現代に逆行するような保守的な空気が政界にも流れているようだ。大きな力を持つ全米ライフル協会が、議員に多額の寄付をして既得権益を守ろうとしている。トランプ大統領も彼らの支持を得たからこそ大統領になれたとも言える。それ故大統領は銃による凶悪事件が発生しても一向に規制へのジェスチャーを示そうとしない。
もうひとつ気になることは、ビルマ(現ミャンマー)のロヒンギャ民族虐待問題である。6日国連安保理事会がビルマ政府に過剰な軍事力の行使をやめるよう議長声明を発表したことにビルマ政府は猛反発している。60万人とも言われるロヒンギャがビルマ国籍も与えられず虐待されたうえ、国外脱出して海上で死亡する例が世界に衝撃を与えている。これに対してビルマ国連大使は、間違った証拠に基づいており緊張を強いるだけだと非難している。
先日漸く腰を上げたスーチー国家顧問が現地を視察したが、はっきり言ってこれはビルマだけの問題ではない。最早ビルマ一国だけで解決出来るようなハードルを遥かに超えている。
そもそもこれが今日大きな問題になった原点は、戦前イギリスが統治下のインド(現バングラディッシュ領)から現在のバングラディッシュ・ビルマ国境山中の原住地にロヒンギャ民族を強制的に移住させたことが問題の発端である。そうだとするなら、国連は貧しいビルマだけに問題解決を迫るのではなく、責任を負うべきイギリスにも問題解決のための主たる方法、対策、援助を要求すべきではないかと思う。イギリスが一向にこの問題に手を差し伸べようとしないのはあまりにも身勝手で、無責任であると思う。はっきり言って現在のビルマには金銭的に解決出来る力はない。