アメリカのアル・ゴア元副大統領が現在訪日中だが、ゴア氏は外国の政治家で尊敬する数少ないひとりである。ビル・クリントン大統領の下で副大統領を務め、その後2000年の大統領選で接戦の末惜しくもジョージ・ブッシュ大統領に敗れたことは記憶に新しい。昨年の大統領選でトランプ氏に敗れたヒラリー・クリントン氏は、獲得票数ではトランプ氏を上回っていたにも拘らず、1票でも多くの票を獲得した選挙人団がその州に割り当てられた直接選挙票の全てを獲得する勝者総取り方式により、敗者となった。ゴア氏もこの方式によりブッシュ氏に負けた。
現在ゴア氏は環境活動家として地球温暖化抑制のため精力的な活動を行い、各国首脳に二酸化炭素ガス(CO₂)削減への協力を要請して世界各国を行脚している。2007年にはその活動に対してノーベル平和賞を授与されている。ゴア氏は安全性というより、コスト面から考えても原発から得られる電力が最も高コストであると主張している。また、日本及び安倍首相に対して、COP21でリーダーシップを発揮し、太陽光発電の導入で温暖化に貢献していると評価する一方で、インドネシアなどの途上国に対して石炭火力発電所建設を支援していることは地球温暖化に寄与すると批判している。中々日本の行動について研究しておられ厳しい指摘である。日本政府がこのごく当たり前のゴア氏の考えをどれほど聞き入れる気があるのかは分からない。私利私欲だけで動く政治家が多い時代に、将来のため、人類のため、地球保存のために懸命に行動するゴア氏のような政治家が日本にもいて欲しいと願う。
さて、今大相撲九州場所がたけなわだが、またもや相撲界に大きな汚点が表れてしまった。現在休場中の横綱白馬富士が、場所前の鳥取巡業中に同じモンゴル出身の貴ノ岩を懇親会の席上暴行し負傷させたことが、不透明な部分も含めて問題視されている。昨日は両国国技館に遠路鳥取県警がやって来て日馬富士から事情聴取した。疑問がたくさん噴出している。事件のあったのは、先月25日深夜である。だが、26日以後も貴ノ岩は巡業に参加している。しかも今月2日に貴ノ岩サイドから鳥取県警に宛てて被害届が提出されている。貴ノ岩は12日の初日から休場している。相撲協会が事件を知ったのは、鳥取県警から連絡があった時で、協会の巡業部長でもある貴ノ岩の師匠の貴乃花親方は協会にこの件について何の報告もしなかった。関係者にはおかしい点がいくつもあるが、中でも貴乃花親方の事件発生以来の行動には疑問が多く、これが事件を分からなくさせ、協会内の動きをこじらせて一歩遅れた対応の原因になったのではないかと思う。
相撲界はこれまでも度々不祥事を起こし、その都度反省の言葉が繰り返されるが、「のど元過ぎれば熱さを忘れる」の類で、時が経つと再び繰り返される体たらくである。この事件もいろいろな問題が複雑に絡んでいて、単なる暴行事件だけではなさそうである。それにしてもいつも危なっかしい行動ばかりで、相撲協会内でも人望のない貴乃花がその中心にいるようでは、今後まだまだ一波乱も二波乱もありそうだ。