元日本テレビ政治部長の菱山郁朗氏から、キューバ革命で活躍された日系人「エルネスト前村」を主人公に映画化された日本とキューバ合作「エルネスト」の試写会にお誘いを受け、期待しながら日比谷の日本プレスセンターへ出かけた。試写会が始まる前に監督を務めた阪本順治氏が挨拶され、制作に取り掛かった2014年から3年かけて完成したが、その間登場人物のひとりであるカストロが亡くなったことに驚かれたという。日本国内におけるロケを除いてキューバにおける撮影では出演者は主役のオダギリ・ジョー以外は全員キューバ人だったという。監督はキューバ人にはキューバならではのイメージがあるので、躊躇する面もあったようだが、監督の考えるように演出したら好いとキューバの人たちに励まされたと語っていた。
タイトルの「エルネスト」とは、残念ながら日本ではあまり知られていないが、フレディ前村という日系ボリビア人のことである。フレディは、ハバナ大学医学部にボリビア人留学生のリーダー役としてハバナに滞在中チェ・ゲバラに出会い、ゲバラに共鳴しボリビアの革命戦争でゲリラ活動をして「エルネスト・チェ・ゲバラ」のファースト・ネームをいただいた経歴がある。ゲバラと同じように山中で政府軍に捕えられ殺害された。私もそういう人物がいたことは薄々承知していたが、改めてフレディの人間性と存在を知り日本人として心強く誇りに思った。そのフレディは生存していれば、今年75歳になる筈であるが、日系人の中に親が移民した国で誇り高い人生を全うした潔い男がいたことに爽快感を憶える。
ほとんどロケはキューバでされ、ハバナ市内やその他の土地の風景が昨年訪れた時に感じたまま映されていて懐かしく思った。やはり道路にゴミ、チリは一切落ちていないくらい掃除が行き届いていて清潔であること、そして雨に恵まれているため殊の外グリーンが目に入って来る。ストーリーも中々面白く力作であると思った。
映画は10月に一般公開される予定である。今年2017年は、ゲバラが亡くなってから丁度半世紀に当たり、先日鑑賞した「写真家チェ・ゲバラが見た世界」写真展のように、何かとゲバラに因んだプロジェクトが企画されるようだ。キューバでは革命を成功させたゲバラだったが、ボリビアでは捕らえられ無念にも殺害されたため、ボリビア革命は成功しなかった。それだけがゲバラにとっても、またフレディにとっても無念だったであろう。
鑑賞してみて久しぶりに爽快感を味わう映画だったと感じた。