昨日の終戦記念日の前後にテレビで中々秀逸な戦争関連番組が放送された。そのひとつに昨夕NHKからスペシャル番組「戦慄のインパール」が放映された。副題として「最も無謀な作戦はなぜ」として3万人もの戦死者を出した作戦が、第15軍方面軍内に反対意見もあった中で、なぜ計画、実行されたのかという点に焦点を当てていた。インパール作戦については、不十分な兵站の作戦自体の失敗、退却計画の失敗など数多くのミスが指摘されている。ビルマ慰霊団でビルマへ戦友会の方々と訪れていた頃、しばしば牟田口廉也第15軍司令官の悪口を耳にしていた。彼が総指揮を取っていた中部高原の避暑地メイミョーも度々訪れた。新聞の番組紹介文に牟田口中将に仕えた少尉の回想メモについて、証言は深く重いものだと書かれていた。
昔を知るビルマの人々の様子も良く描かれて、中々味のある深刻なドキュメンタリーになっていたと思う。
ただ、どうしても日本人にとって理解し難いのは、3万人もの兵士を死に至らしめ、白骨街道と呼ばれたようにその内の6割が退却時に亡くなった。にも拘わらず、責任を負うべき作戦の総大将・牟田口廉也中将が戦後戦犯に問われることもなく、戦後も自己弁護に終始してのうのうと生き、1966年77歳で亡くなったことである。今日でも責任者の地位にありながら、言い訳三昧で他に責任を被せる不誠実な人物を見るが、牟田口の戦中、戦後の所業は、インパール作戦で亡くなった兵士にとってあまりにも極悪な裏切り行為ではないだろうか。
さて、去る12日アメリカ東部バージニア州シャーロッツビルで、南北戦争時に奴隷制存続を主張して敗れた南部のロバート・リー将軍像撤去に反対する白人至上主義者らが、黒人の権利擁護や差別撤廃を訴えるグループと衝突したところへ白人主義者が車で突っ込み死傷者を出す騒ぎとなった。これを巡りトランプ大統領が非難したが、当初人種差別を容認するかのような発言をしたことに非難が高まっていた。
そして事件から2日後の一昨日14日になって、余りにも批判が集中したこともあって、KKK(クー・クラックス・クラン)やネオナチズムら白人至上主義者の団体に対して、暴力を引き起こした団体は犯罪者で残忍な悪漢だと名指しで非難した。ところが、この発言が遅すぎるとメディアから指摘され、これに対して産業界にも抗議の声が広がり、トランプ政権と良好な関係を保っていた経済人らからもトランプ大統領を非難する声が上がっている。
トランプ大統領は大統領選中から異民族や移民に対して排外主義的な発言を繰り返し、意図的に露骨な差別を口外していた。今度の発言は思わず本音を口に出したということだろう。
14日の取り繕い発言で事態が収束したわけではない。今後も同じような発言が繰り返されることを憂慮している。