北関東と東北地方を襲った水害は、被災した各地に大きな後遺症を留めているが、死者はこの種の災害では4人と数字的には少なかったかも知れない。だが、避難者数は6千人近くに上り、家屋や田畑が蒙った被害は想像も出来ない。
市内が一面に水に浸かってしまい、茫然とする被災者の前にはこれから長い苦難の道が待っていると思うと気の毒で堪らない。水没した稲穂を見て収穫を断念した農家の人が、納屋にある農機具もすべてダメになったと寂しくつぶやいていた姿も忘れられない。
今日都内で外国人観光客が取材されて、日本は自然災害の多い国なので、河川の堤防はきちんと備えるべきだと発言していたことと、もしこのような堤防決壊の可能性を旅行前に知っていたら日本へは来なかったと発言していた観光客がいたことが印象に残った。
間もなく御嶽山の噴火から1年を迎えようとしている。そして今日熊本県の阿蘇山が噴火して噴火レベルを3へ引き上げた。阿蘇山噴火は36年ぶりのことだという。巷では首都圏直下型地震の発生もいつ起こっても不思議ではないと懸念されている。このように日本国中自然災害の恐れのないところはない。
その中で桜島火山に近い九州電力川内原発が、つい先日2年間の原発ゼロ状態から再稼働をスタートさせた。国民の間にも原発反対の声が過半数を超えている中で、敢えて原発ゴーサインを出した安倍政権の原発政策が鼎の軽重を問われている。
そして昨日の朝日新聞に小泉純一郎元首相が、首相退陣後初めて報道機関のインタビューに応じて原発ゼロについて持論を訴えた。
小泉元首相の原発再稼働反対の持論と強い信念は、これからの日本のエネルギー政策の在り方を信念に基づいて主張したものだ。かつて首相在任時に原発を推進してきた立場上責任を感じていると述べ、当時は安全、安い、クリーンと信じてきた原発が福島原発事故でその偽りを知るに至り、「過ちを改むるに憚ることなかれ」と孔子の言葉に倣い、断固原発反対であると立場を変え、2013年8月にフィンランドの放射能廃棄物最終処分施設を視察して一層考えを固め、原発反対の強い姿勢に転じた。
小泉氏は首相の決断さえあれば原発反対へ転じることが出来ると安倍首相に強く働き掛けたが、安倍首相が考えを変えることはなかった。有言実行で郵政改革を実行したご本人だけに強い説得力がある。
最近10年間を見ても新潟中越地震や東日本大震災のようなM7前後の地震が頻繁に起きている。世界一安全だなんて言葉を安易に使うが、厳しい安全基準を出した原子力規制委員会田中俊一委員長ですら、「絶対安全とは申し上げない」と言っている。過去2年間日本は原発ゼロでも停電もなしにやってこられたことを考えれば、危険で費用が高く使用済み核燃料の処分場所さえ決まらない原発より、原発ゼロ社会の方が遥かに国家の政策として優れていると主張する小泉氏の言い分の方が説得力を持つと思う。