世界的に大きな事件が連続的に起きている。意図的であろうとそうでなかろうと、事件は事件であり、事故は事故である。VWディーゼル車の排気ガス不正ソフト使用問題の影響は、アメリカでは司法当局が介入することになり、VWの本拠・ヨーロッパでも調査を始めた。VW傘下のポルシェやアウディまで調査の対象とされることになった。VWでは会長が責任を取り辞任した。他にも販売量の多い中国や韓国などにもその影響は及んでいる。辞任したVW会長は、自らは不正に関与していないが責任を取ったと述べているが、ソフト不正使用は、何も知らない消費者を裏切るもので実に悪質である。過去10年急速に生産と販売を伸ばしてきたVWが、残る大きなマーケットであるアメリカ市場に狙いを定めてディーゼル車を売り込もうとして功を焦ったのか、大きな落とし穴へ落ち込んでしまったようだ。
大きな事故としては、昨日サウジ・アラビアのイスラム教聖地・メッカ近郊のミナで行われた、ハッジ(大巡礼)で悪魔に投石する儀式で将棋倒しになった巡礼者717人以上が死亡した。1990年にも同じ行事で1400人もの犠牲者を生んだ。狭い場所に大勢の人々がすし詰めになると、いかにイスラム教の戒律に基づいてやったことであれ、神の恩恵と救いは受けられないこともあることをイスラム教が図らずも教えてくれた。
さて、今国際的に大きな問題となり、ヨーロッパ各国が頭を抱えている難民問題について、EUは多数決により加盟国が分担して難民を受け入れることを決めた。この決定にはそれぞれ加盟国の思惑やお家の事情もあり、とりわけ中東欧国の反発が強く、簡単に決まったわけではない。EU主要国としては止むを得ず強引に多数決で決めざるを得なかった。取り敢えず今後2年間で12万人の受け入れを決定したが、押し寄せる難民の数は益々増加し、今年だけで40万人もいるとみられている。
そんな厳しい状況の中で、昨朝の朝日新聞に緒方貞子・元国連難民高等弁務官が取材に応えていた。緒方氏は1991年から10年間に亘って難民高等弁務官として難民問題を間近に感じ、どう対処すべきかを常々考えてきただけに持論に説得力がある。日本が難民審査基準を厳しくして難民を認定しようとしない対応に、日本人の島国根性と厳しい法務システムを批判し、安倍晋三首相が声高に唱える積極的平和主義について、難民を受け入れることは積極的平和主義に繋がるとして、現状の厳しい審査基準を批判している。緒方氏は日本は人道上難民問題に正面から向き合い、彼らに救いの手を差し伸べることこそが、積極的平和主義の理念に叶うのではないかと主張している。その通り緒方氏の説と論理の方に理があると思う。
その安倍首相は昨日自民党総裁選に無競争で選ばれた後の記者会見席上で、アベノミクスの新しい3本の矢について語った。公約したデフレ脱却がお題目に終わろうとしているのに、今後3年間の総裁任期中に、GDPを2014年度490兆円から2割アップの600兆円規模にまで達成させると大見栄を切った。現実的な視点から語る緒方氏に比べ、安倍首相はいつも夢ばかり追っているノーテンキな人である。
次に、新国立競技場建設問題で迷走した責任の所在とその経緯を検証する第三者委員会(委員長・柏木昇東大名誉教授)が、昨日新国立競技場建設については適切な組織体制を整備出来なかったとして、下村博文・文科相と河野一郎・日本スポーツ振興センター(JSC)理事長の責任を挙げた。しかし、名指しは避けたものの、森喜朗元首相や競技団体、文化関係の重鎮らが名前を連ねた「国立競技場将来構想有識者会議」が、現実にはJSCの諮問機関としての役割を超えて最高意思決定機関になって、JSCが思うように「有識者会議」をコントロール出来なかった点を問題視した。
これを受けて下村大臣は給与・賞与を辞退し、大臣職辞意を表明し、次の内閣改造で辞職すること、河野氏の今季限りの任期終了を以って辞職することが決まった。
これで良いのだろうか。どうもまだ問題が潜在化しているように思えてならない。