3070.2015年10月9日(金) 慶事の裏に不祥事あり

 今週は月曜日に今年のノーベル賞医学・生理学賞に大村智教授が選ばれ、翌火曜日物理学賞に梶田隆章博士の受賞が決定し、水曜日に日本得意分野の化学賞が決まるとあって今年3人目の日本人受賞者が日本中で期待されていたが、そうは問屋が卸さず空振りとなった。そして木曜日の昨日、かねてより受賞が噂されていた村上春樹氏に文学賞が受賞されるかと期待され、テレビ中継がされていたが、これも残念ながら空砲に終わった。しかし、今年も2人の日本人がノーベル賞を受賞して、2000年以降ではアメリカに次いで、日本はノーベル賞受賞者の数が多いという名誉ある国家となった。

 これらの栄誉に比べて何と言っても遅れているのが、政治である。国会議員は、憲法学者や国民の強い反対を傲慢にも押しつぶし、彼ら流儀の憲法解釈で強引に憲法違反を犯した。それでいながら開き直って屁理屈を述べる臆面のなさである。科学分野では世界の先端にいながら、政治は遥かに遅れを取って、果たしてこれから日本は民主国家としてどう進むのか心配である。

 さて、難産の末漸く決着した環太平洋経済連携協定(TPP)について、内外でその具体的な運営について、或いは実施について喧しい議論が行われている。

 日本にとっては有利、不利の両局面で検討がなされているが、自動車産業はアメリカの関税撤廃が大きく寄与すると見られ、その点は日本にとっては有り難い。一方で米を中心とする農業分野ではかねがね農家に打撃を与え、日本の農業は立ち行かなくなるとの悲観的な認識が流布し、旨い日本の米はいずれ食べられなくなると心配されていた。しかし、専門家の話によると近年円安の影響と大規模農業の生産力向上により、必ずしも日本不利とは言えないようだ。単位は失念したが、日本米とカリフォルニア米の価格差は10年前には日本米が2倍の高価格だったが、今では日本米の方がやや安価という逆転現象を示している。これが、今回の交渉妥結に当たって、日本側にとって大きな障害とはならなかった原因ではないだろうか。しかし、他の農業、酪農分野においてはすっきり合意内容を呑むわけにはいかない事情もある。いずれにせよTPPは、日本にとって必ずしも歓迎出来ない交渉だったが、そうではなくなりつつあるということであり、日本もこれで一歩国際化へ踏み出したと言える。

 ところが、海の向こうアメリカで一波乱ありそうな雲行きになってきたのは想定外だった。来年の米大統領選へ名乗りを挙げている民主党の前国務長官ヒラリー・クリントン氏が意外にもアメリカにとってプラスにはならないと反対意見を唱え出したのである。国務長官在任中には、賛成していた同じ人物にとって選挙がからむとかくも簡単に持論を変えてしまうのだ。他に反対を唱えている人物には、共和党大統領候補として数々の話題を提供しているトランプ氏がいる。自らが選挙の主役となるとこうも安易に私利私欲が頭をもたげてくるというのは、日本だけに留まらないようだ。民主党、共和党をトップで走る大統領候補者のどちらかが仮に大統領になったら、折角5年半もかけて合意を得た努力と時間が無駄になる。

 一方、最近のスポーツでは、ラグビー人気が高まる嬉しい流れの中で、野球とサッカーに不祥事が発生して顰蹙を買い、非難を浴びている。

 野球ではプロ野球巨人軍の福田聡志投手の賭博事件への関わり合いが大きな問題となっている。1960年~70年代に起きた黒い霧事件の再現となりかねない。1人ひとりの選手が、賭博、麻薬などの反社会的な面を拒絶する強い自制心を持たないと喉元過ぎれば熱さを忘れるの二の舞で、再び不祥事は起きる。

 もうひとつ大きな問題は国際サッカー界のスキャンダルである。先日来国際サッカー連盟(FIFA)ゼップ・ブラッター会長の資金不正、収賄事件が取り沙汰されていたが、ここへ来てスイス検察当局が捜査を始めた。その結果、会長はもちろん、次期会長選へ立候補を予定していたFIFA副会長ミシェル・プラティニ氏、そして元副会長で同じく次期会長選へ名乗りを挙げていた韓国の鄭夢準氏が揃って資格停止処分と罰金を課せられた。国際サッカー界には巨額の資金が流れ込む構図になっており、良からぬ噂が溢れていた。かつてのスーパースター・プラティニ氏の面目は丸つぶれであるが、今回当局がどろどろした大組織の金の流れへ切り込んだのは、反って良かったのではないかと思っている。

 こういう大組織役員への汚職取り締まりの一方で、驚くべきことに現役有名選手にも別の容疑で司直の手が入った。何とFCバルセロナのスター選手、アルゼンチン出身のリオネル・メッシ選手が、スペイン当局から脱税容疑で禁固22カ月を求刑されたのである。容疑は父親と肖像権収入をタックス・ヘイブンの会社に隠したとされている。今後どうなることか、今のところ何とも言えないが、仮に実刑を課せられたら、メッシ選手の選手生命も終わりとなりかねないし、名門FCバルセロナにとっても不名誉で屈辱的であろう。

 いずれにしてもあまりにもグレイですっきりしない事件である。サッカー人気に陰が射さなければよいと思う。

2015年10月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com