3072.2015年10月11日(日) 国力衰えたアメリカの威信と影響力

 国際社会における国家間の縄張り争いというか、威信を賭けた駆け引きは、時として行き過ぎて熾烈でここまでやるかと思わせられることがある。近年自他ともに「世界の警察」と認めていた超大国アメリカの国力の衰えによる威信の低下が言われて久しいが、それは相対的に中国が持ち前の中華思想に裏打ちされた、世界の中核であるとの考え方が国力の充実と相俟って国際社会へその存在を拡大させてきたからでもある。中国の覇権主義と大国主義は、日本を追い抜いてGDP世界第2位になってから一層自己中心的、かつ独善的となり、今やその百家争鳴ぶりは凄まじく世界の隅々から顰蹙を買っているほどである。それは南シナ海における海洋進出で強引に公海上に島を造り、自国領土としてアピールするパフォーマンスが典型的な例である。

 加えて中国の経済力に関して統計上は、国のGDPは確かに世界2位にのし上がって来たが、人口が多いせいもあり、1人当たりGDPで比較すれば、わが国の約1/10である。国内の貧富の差が激しくなったことがよく分かる。マルクスが予想もしなかった共産社会における貧富の格差が共産国家・中国には存在するのである。それでも中国が、かつてのソ連とアメリカの世界2大国に取って替り、アメリカと自国こそが世界の2大強国であるとの自信たっぷりの立ち居振る舞いとプロパガンダには圧倒される。

 一方、ベルリンの壁崩壊後、力が衰えた旧ソ連・ロシアが突如再びその存在感を世界に示しつつある。それが停滞気味の経済面ではなく、軍事力の行使であるだけに国際社会から警戒の目で見られている。ロシアは昨年ウクライナの内政問題に介入するや否や、直ちにクリミヤ半島へ侵攻し、占領して東部の親ロシア地域まで掌中にロシア領土へ編入する露骨な武力行使を行った。

 そのような時にシリア情勢の混乱につけこんで、圧政を敷くアサド独裁政権を支援するフリをしながら、「イスラム国」殲滅作戦と言ってロシア空軍機による空爆を行った。このロシアのやり方が、実はシリア・アサド政権が手を焼いている反政府軍を攻撃していると言われている。このロシアの攻撃参加により、「イスラム国」攻撃より、むしろロシアはアサド政権を支援した結果となり、欧米にとっては大きな誤算となった。

 ロシアは、空軍機からの攻撃だけに留まらず、カスピ海からシリア国内に向けて弾道ミサイルを発射し、その内のいくつかはイラン領内にも落下したとの報道がある。この様子を見てロシアの攻撃をむしろ評価する国も出始め、その反面アメリカの権威は落ちている。更にアメリカのアフガニスタン領内の誤爆により「国境なき医師団」が活動する病院が爆撃され多数の死傷者が出て、アメリカは人道面でも国際的に非難されている。ここでもアメリカに対する評価は大きく後退した。

 今やアメリカの力と評価が下がる一方で、公平な評価ということでないにせよ、相対的にロシアや中国の力と影響力は確実に高まっている。ロシアと中国にとっては思う壺である。

 2006年バラク・オバマ氏がアメリカ合衆国の大統領に就任して僅か9カ月後に、平和への力強いアプローチと実のある結果を期待されて、華やかにノーベル平和賞を受賞したが、オバマ大統領の力と影響力も、今や影の薄いものとなった。そのオバマ大統領にぴったり追想している日本の安倍首相、否わが国の前途は、このままで本当に大丈夫なのだろうか。

2015年10月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com