31.2007年6月14日(木) 信長と荒木村重の謀反

  毎朝、毎夕購読新聞の小説を愛読しているが、日経夕刊の連載「地の日天の海」が佳境に入って興味津々である。内田康夫の歴史小説を読むのは初めてだが、間口はそれほど広くない割に、奥行きが深く話の先行きに期待を抱かせる内容である。それに、仏僧が時の為政者に関わる視点が面白い。出だしは、随風という坊主の修行から始まったが、いまや天下を争う戦国大名の城取り物語となって、いやがうえにも興味が増してきた。登場人物も信長、秀吉、光秀、家康、信玄、謙信ら多士済々である。信長の冷酷な戦いぶりと、部下の規律、敵敗残将兵への接し方、等が鋭い筆致で描かれているが、今更ながら信長の血も涙もない、冷血な性格には言葉もない。ここ数日間に亘る西国毛利藩討伐の途上で、謀反を起こした荒木村重が篭った摂津・有岡城の1件では、裏切った末逃げた村重に対する仕置きとして、降伏した城内の家来を含む、足軽、女どもに到るまで全員皆殺しにした残虐ぶりには、秀吉も恐れをなしたとされる。そのせいか元々人殺しを好まなかった秀吉は、播磨・三木城の兵糧攻めでは降伏した城主・別所長治を切腹させはしたが、ほかには誰一人として処刑せず、それが秀吉の株を大いに上げたと言われる。       

 それにしても比叡山仏僧、一向一揆衆、有岡城家来ら、これほどの残忍な虐殺を行った信長が、京都の公卿にはまったく手を下さなかったのは、公卿は常に為政者にべったりで、出世のために利用価値があり天下人になるには好都合であると考えていたからであると理解している。現代でもどこの組織にもありそうな話である。かつて私自身もそんな空気を、あるところで身近に実感として受け止めたことがある。それにしても信長は鋭く、怖い男だ。時折信長は反面教師だと感じることがあるが、この歴史小説はそんなことも思い起こさせてくれた。

2007年6月14日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com