70.2007年7月23日(月) 戦前の国民の一途な思い

 昨日の日経紙「春秋」欄にこんなことが書いてあった。戦時色濃厚の1940年(昭和15年)3月に現在の東京晴海の埋立地を会場に万博を開催する予定で、地鎮祭も済ませたが無期延期になった。すでに発売した前売り入場券百万枚のうち、2割が払い戻しされないまま国民の手に残った。30年後の大阪万博の際、これをどう取り扱うか、国会でも取り上げられたそうだが、そのまま入場券として通用させた。すると戦前の未払い戻し入場券のうち、約1.5%にあたる3077枚が、大阪万博で使用されたという。

 「春秋」氏は、社会保険庁職員はこのエピソードの記録映画でも見て、お金を預かる責任の重さを考えて欲しいと述べている。

 それもそうだが、私は二つの点で感銘を受けた。購入した人たちはそれぞれにぜひ見てみたいと万博への夢を捨てきれなかったということと、いつか夢が現実となって現場に居合わせたいという願いを持ち続けていたという点においてである。戦中、戦後の混乱の中でも、一度掴んだ夢を手放したくないという気持ちが何とも切ない。それにしても払い戻しされないままの残りの98%強の前売り券はどうなったのだろうか。持ち主が亡くなってどこかへいってしまったのだろうか、はたまた、使用できるなどとは露知らず、記念品としてひっそりどこかに保管されているのだろうか。また、その購入者の運命はどうなったのだろうかと考えると、戦争に翻弄されたとはいえ、気の毒で堪らない。

 現実に万博は開催され大成功裏のうちに幕を閉じた。3千余人の人々の長い間の期待に応えようとの気持ちが国にあったかどうかはともかく、国は大きな事業を成功させたわけである。国民が国を愛し、当てにしていることは、この一途な行為と結末を見ても明らかである。「春秋」氏の言うように、社保庁職員のみならず、すべての政治家も国民の気持ちを知るうえでも、この記録映画を鑑賞すべきだと思う。

2007年7月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com