104.2007年8月26日(日) カラマーゾフの兄弟

 NHKニュースが報道していたが、あの堅いドストイェフスキーの「カラマーゾフの兄弟」が売れているという。書籍販売が低迷している時だけに珍しいことである。たまたま先日再読しようと思い米川正夫訳の岩波文庫の第一巻を買ったのだが、この意外な珍事を知り、いささか驚いている。しかし、人気の秘密は、東京外国語大学の亀山郁夫教授訳による光文社文庫で、その理由も現代訳で分りやすいとの評判に基づくもので、読者にとってどこまでロシア文学の時代背景とか、ロシア人の人間関係を克明に描いたストーリー性に関心があるのだろうか。是非は別にしてやはり気難しい米川正夫や、原卓也、江川卓の翻訳では受け入れられないらしい。この辺りがどうも現代的なのか、亀山訳を読んでみないとよく分らない。

 表現はもちろん分りやすく翻訳し意訳したのだろうが、ドストイェフスキーの表現したいこととあまり乖離しないよう願いたいものである。時間が出来たらいずれ亀山訳本を読んでみようと思う。

 それにしてもこんな肩の凝る名著を、いまさら読みやすく書き換えるというのはどういう意図があるのだろう。現代っ子はこの「カラマーゾフの兄弟」をいとも簡単に「カラキョー」と呼ぶそうである。これでは「風とともに去りぬ」は「カゼサリ」で、「チボー家の人々」は「チボヒト」か? 何でも茶化す現代の軽薄な風潮だ。そう言えば、「ドストイェフスキー」のことを、一部の現代っ子は「ドスト氏」というのだそうである。ふざけている。

2007年8月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com