108.2007年8月30日(木) 「第121回J.I.フォーラム」に参加

 今日の「構想日本」のフォーラムは有意義で大分勉強になった。テーマは、「『福祉』は本当に人を幸せにするのか」で、ゲストに宇沢弘文東大名誉教授、田中優子法政大教授、コーディネーターは前回に引き続き、ノンフィクション作家山岡淳一郎氏が登場された。

 冒頭加藤秀樹代表(慶大教授)が、これまで年金についてはその仕組みについて議論されるばかりで、年金を生み出した福祉政策は国民にとって果たして幸せなのか、という肝心な点に絞って話を伺いたいと挨拶された。

 2人の専門家の話を聞くのを前々から楽しみに出かけた。宇沢先生は苦労人で、世界各国で研究に当っておられただけに、含蓄に富んだ話を面白おかしく聞けた。宇沢教授のお名前とその白ヒゲの独特の風貌は承知していたが、かつて日経連載の「私の履歴書」を読んで感動したことがあり、一度どんな話をされるのか関心を持っていた。確か父上が腕の良い木工職人で、その人柄を見込まれ養子に入ったが、養父母に気に入ってもらえず、幼かった宇沢先生を残して母の実家を去った。しかし、生涯再婚せず、近くに掘っ立て小屋を建てて遠くから宇沢先生を見守っていたという切ない話だった。とにかく話題が豊富で人間味に溢れている。成田空港闘争に際して、政府の依頼により、政府と地権者の間の仲裁役を務めた。一応決着がついたように見えるが、根本的には解決していないとの話だった。政府が地権者、農民たちのCOMMONSを破壊してしまったからだと説明された。シカゴ大学時代に同僚のフリードマン教授が唱えた「市場原理主義」に反論したが、タカ派急先鋒の教授に言い負かされてしまったと笑っておられた。限られた時間内ではあったが、社会共通資本、COMMONSについて持論を展開された。

 田中先生は流石にTVのレギュラーとして出演しているだけに、弁舌爽やかに江戸時代の「個と集団」の関係について話され、住む場所と働く場所が一緒だったのが、産業が起きたことにより家と仕事の分離が始まり、家に仕事がなくなった。それが昔に比べて生活しにくくなった原因であると指摘された。また、相互扶助をするとどうしても排他的になる例として、江戸時代の盲人仲間の「座」の話をされた。

 山岡氏も前月より、一層ゴーディネートぶりが上達され、充実したシンポジウムになった。

2007年8月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com