158.2007年10月19日(金) 日経シンポジウム「観光立国日本を目指すために」

 日経新聞と日本経済研究センターが主催するシンポジウムの参加者を募集していたので応募したところ、参加状を送ってくれたので、今日午後大手町の日経ホールへ出かけた。

 題して「観光立国日本を目指すために」と謳って、小泉前首相のお声がかりで国家の基本計画にも組み込まれた、‘VISIT JAPAN CAMPAIGN’のインバウンド・ツアー振興について議論するものである。基調講演者は東洋文化研究家アレックス・カー氏である。五月に「構想日本」シンポジウムでお話を聞き、その際収録されたTBS日曜番組「情熱大陸」には、偶々私の姿も写ってしまった。

 今日も同じスライド(パワーポイント)を別の切り口で見せてくれたが、相変わらず日本の文化、伝統、自然の破壊について日本人以上によく調べておられる。カー氏の着眼点、分析力、行動力、考え方、日本に対する愛情等に敬服する。カー氏の言わんとしていることは、日本人が自分たちの自然が破壊されていくことに無関心すぎると警告しているのだ。日本人は祖先から受け継いだ美しいものをもっと大切にしましょうと言っているのである。その点は、その後のパネルディスカッションでパネリストのひとり、白幡洋三郎氏(国際日本文化研究センター教授)と、考え方において微妙なずれがある。白幡氏は京都に住み続けている、知研名誉顧問でもある梅棹忠夫教授の言、「京都のことは放っておいてくれ」を引用していたが、ちょっと違うのではないかと思った。

 カー氏はアンチ・リアリズムを指摘し批判の対照として、「工場モードの勝利」と皮肉っていたが、具体的には電線、看板、ネオン等を挙げていた。それらを出来るだけ取り除かなければダメだとはっきり指摘している。特に、池坊本家の玄関口に展示されている生け花のオブジェが、本物ではなくプラスチックであることにがっかりされていた。

 もうひとりのパネリスト、舩山龍二JTB会長は、さすが旅行業の現状についてよくご存知で、観光業界発展の要因として具体的に5点挙げていた。①経済発展、②ハードの供給、③情報提供、④市場構造の変化、⑤平和、である。

 個人的に舩山氏とは、30 年前の成田空港開港の年、1978年の海外旅行業界の展望を占う新春座談会でご一緒したことがある。78年1月16日発行の週刊「トラベルジャーナル」誌の新春特集・中堅座談会で舩山氏は当時JTBルック販売課長の職にあり、私も海外旅行課長だった。同席されたのは、淺川啓介ジェットセンター所長、佐久間融日立トラベル課長代理でいずれも中堅の管理職者だった。77年の海外渡航者が300万人だったから、下記の数字でも推測されるように、いま振り返ってみても隔世の感がある。

 司会役を務めた小島明日本経済研究センター会長は舩山氏ともども、63年の観光基本法とともに、観光立国推進法が、インバウンド発展にとって大きな推進役となるであろうとまとめた。

 観光立国推進法の目指す中身は、要約すると①2010年までに、インバウンド客1千万人、②アウトバウンド客数2千万人、③観光業取扱額30兆円、④国内旅行客平均宿泊日数4泊(現状2.77泊)、⑤国際会議開催20%増である。

 4人の経歴が異なるだけに、若干見方、展望は一致しない点もあるが、中々面白い議論の展開だった。

2007年10月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com