198.2007年11月28日(水) 感激の青海チベット鉄道

 どうもお尻の周りがじめじめしてぱっとしない。また、一日悩まされるのかと憂鬱になってきた。隣の相棒、郭忠良さんは目覚ましをかけていて、朝になるとさっと着替えて7:00にゴルムド駅で降りていった。日本語はもちろん、英語も理解しない人と意思を通じさせるのは大変だ。ぶらぶらひとり旅を気ままに楽しんでいた頃は、細かい目標や予定を立てずに歩いていて好い加減だったということもあったが、あまり気にも留めず平気で言葉の通じない人たちと交流していた。でも郭さんは、結構筆談とボディランゲージで仕事と家族のことを話してくれた。毎月1回ゴルムドへ出張すると言っていた。未知の人としばしの間一緒に過ごし、その人の人柄や、家族、文化・習慣の背景を知るのは中々興味があるものである。僅かの時間ではあったが、愉快なひとときを過ごせた。

 朝食は弁当を配達してくれた。意外にもボリュームはあまりなく、あっさりしている。重湯がついていたのは、食欲がさほど進まない時だけにタイムリーだと思う。

 どうも痔の具合がすっきりしなかったが、偶々覗いたトイレが便座式だったので、やれやれだった。一応問題解決。

 車窓から眺める広大な景色は土の大地と高原というイメージである。荒々しく土一色で、雪を被った崑崙山脈が優雅な姿を見せると、雰囲気がぐっと上品に変わる。昨日標高2,200mの西寧を発ったがランチを食堂車で食べる頃には、早くも4,682mを超えた。自分自身にとっての到達最高標高である。食事中にトド川駅に停まる。トド川は長江の源流のひとつである。左右には一木一草もないといってもいい。所々野生の動物が草を食んでいるのが見える。

 2時半前にタングラ駅を通過する。5,068mで世界最高峰の鉄道駅である。またまた自己最高記録達成である。この西蔵鉄道が完成するまでは、ペルーのアンデス中央鉄道の4,783mが最高だったというから、一気に5,000mのシーリングを越えた。左手に峠5,072mの石碑が建っている。列車はスピードを落とすでもなく、観光客にサービスをするわけでもなく、あっという間に過ぎ去って行った。流石にこの標高になると身体も異常を感じるらしく、今朝から図っている血圧は若干高めだが、脈拍がこんなに増加するとはこれまで考えたこともなかった。60を少々下回るのが平常値だったが、今朝になって103に、昼前には118で平常値の二倍になった。気圧の影響でハンドクリームのチューブが破裂しそうだったが、栓を抜いた途端に、内部のクリームが飛び出してきた。筆ペンもそうだ。黒インキがもれてきた。そう言えば、NHKの取材番組で、食堂車のコックが普段30分で済む料理が仕上がるまでに、3倍も余計にかかるとぼやいていた。

 参加者の中には高山病だろうか、何人かが具合が悪くなったようだ。私も昨日高山病に効くという「紅景天」なる漢方薬30錠を購入(220元)して、昨夕から2錠服用(1回2錠、1日3回)している。中には、酸素吸入をする人も出てきた。やはり標高5,000mというのは、かなり人体にきついのだろう。

 沿線風景は素朴で幽玄、また高地の自然の姿が如実に現れる。昼食後に硬座車を探検に行く。満員の座席にチベット人が民族衣装を纏って窮屈そうに黙って座っている。デッキに寝転んでいるお年寄り、デッキにしゃがみこんで赤ちゃんにお乳を上げている若い母親、無心にトランプに興じる大人たち、頑是無い子どもたちの笑顔、意外に子どもの姿が多い。ほっぺは赤く、あどけない表情が可愛い。やはり目立つのか、カメラを手に取っていろいろ話しかけてくる。彼らをカメラに収める。デジカメの画面を食い入るように見ている人たち。満席の人々はそれぞれに目的を持っていずこかへ向かうのだろう。

 右手に最高位淡水湖、ツォナ湖が見える。沿岸は凍結して、その奥は透き通るようなコバルトブルーに輝いている。

 私は郭さんが下車してから、ずっと個室になったので、楽々コンパートメント室を使い、このパソコンを打ったり、気が向くと他の参加者の部屋を訪れては、自由な時間を楽しんでいる。

 ラサ駅へ21:50に到着した。予定より若干早めである。中国の鉄道駅はどこも暗い。建物はこの列車のために建設されたもので、真新しい。駅前は真っ暗である。ここで2日間ガイドを務めてくれた劉秦さんとお別れである。ホテルへ向かう途中でこれからガイドを務めてくれる曾さんが、早速全員に携帯用酸素とミネラルウォーターを配り、前者の使い方について説明してくれた。これも高地チベットならではの初歩滞在術か。明日までは高山病予防の見地から、湯船にとっぷり浸かるのは止めた方が賢明とのアドバイスもあった。「郷に入っては郷に従え」だから、風呂には入りたいが仕方がない。しかし、ツアーで酸素吸入の方法まで説明を受けるのは初めてだった。ラサの標高は3,650mである。

2007年11月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com