朝9時半にホテルを発ち、午後7時半に帰ってきた。いよいよ憧れのポタラ宮殿見学の当日となった。若干予定を変更して午前中にダライ・ラマの夏の離宮だった「ノルブリンカ」を見学して、午後からポタラ宮殿と同じく世界遺産の「大昭寺」、その後大昭寺を取り巻く繁華街バルコルを見学した。ほとんど歩き通しだったので、最後には疲労困憊で、だらだらバルコルを歩いている有様だった。
旅行前から懸念していた両膝炎症による歩行がどの程度持ちこたえられるか、不安の気持ちが先に立つ。しかし、他にも足や、膝に問題を抱える参加者がいて、彼らともどもゆっくり登ってダメなら諦めて降りてこようとの暗黙の了解が出来た。
中学時代にポタラ宮殿の写真を診た時の印象が強烈で、何とか訪れてみたいと今日まで夢を温めていた。幸いチベット鉄道の開通もあって、夢はぐっと現実味を帯びてきた。そして、今日夢が実現した。
グループ行動によるポタラ宮殿見学前に、ひとりで正面へ向かった歩道上で宮殿に向かって「五体投地」をやってみた。20年以上も前に成都のホテルの廊下でふざけ半分にやったことがあるが、今回は改めて真面目な気持ちでやった。正に念願叶ったとはこのことである。その後、参加者全員でゆっくり石段を登った。上から見下ろすラサの街がまるでパノラマのように見える。写真を撮りながら、蟻の歩みのようにして登った。石段を登った後に、内部へ入り狭い階段を上り下りしながら、ガイドの曾さんの説明を聞く。ダライ・ラマ歴代の物語と遺品に触れる。それにしても、これだけ広大な宮殿を17世紀に完成していたというから驚きである。こういう立派な遺跡を訪れる度に、昔の人々の叡智と努力には頭が下がる。壁や仏像から古の足音が聞こえてくるようだ。感激極まり、自分自身がこの場にいるのが不思議なくらいに気持ちは興奮している。写真も撮りまくった。やはり生で触れなければダメだ。本物に勝るものはない。いくら綺麗な写真を数多く見ても、一度でも本物に触れたとしたら、とても敵うものではない。これが、「臨場感」の強さと説得力である。
その後大昭寺を訪れて、その説得力のある存在に心を奪われた。しかし、やはり直前にポタラ宮殿を見学してしまっているので、些か拍子抜けの感がするのも事実である。
夕食はチベットの民芸舞踊を見せてくれた。歩きすぎて疲れ、ホテルにはほうほうの態で戻ってきたといったらよいだろう。それにしても充実した一日だった。これだから海外旅行は止められない。
今日は、妻が瞼の手術を受けている予定で、気になっていたので、ポタラ宮殿と大昭寺で何度も何度も無事をお祈りした。