216.2007年12月16日(日) 登山家・芳野満彦さんの山岳画を入手

 小田急百貨店で登山家、兼画家である芳野満彦氏の山岳画展「冬の訪れ」をやっていて、妻の手術傷跡目隠し用サングラスが出来上がったので、受け取りがてら覗いてみた。3日前の日経新聞「春秋」欄に分かりやすく芳野さんのお人柄と経歴、並びに業績が紹介されていた。会場はあまり広くないスペースに30枚程度の画が展示されていて、その一隅に芳野さん専用の登山用具が置かれていた。そこにアレッ?と思うくらいの小さな登山靴があった。凍傷で両足の土踏まずから切断したために、わずか12㎝の寸法になってしまったのだ。

 芳野さんと言えば、新田次郎の小説「栄光の岸壁」のモデルとして描かれ、登山界では伝説的なヒーローである。脳梗塞で倒れ、胃も3分の2を切除され、今では登山から遠ざかっていると伺った。日本人として、初めてマッターホルンの北壁を登ったことでも知られている。長い間私にとっても憧れの登山家であった。展示された画の中には、興味を惹かれた画がいくつかあり、見つめているとつい一幅欲しいという気になる。偶々展覧会ポスターに使用された、快晴下のマッターホルンの画「マッターホルン快晴」8号が展示されていて、それが頗る気に入った。まったく計算外だったが、値も手頃だったのでその名画を思い切って買い求めることにした。購入の話をしていた時に、係員が芳野さんはそこに居られますよとお引き合わせしてくれた。まさに感激ものである。今年75歳の芳野さんは、考えていた通り腰が低く丁重に話に応じてくれた。購入した画と、画集「山靴の音」、画展ポスター、それぞれに丁寧に妻と私の名、日時を書き入れて、署名と篆刻をしてくれ、画の裏には、マッターホルンにまつわるご自分の思いを、

 「快晴のマッターホルンこそ美しい眺めはないかも知れません・・・。この絵はツェルマットから描いたもので、私にとって日本人として初めて登った北壁、特に目にシミます。思い出は永遠に尽きることなく、そして遠くに新たにあることを」と書いて下さった。

 私自身ツェルマットに何度か泊まり、マッターホルン展望のためにゴルナー・グラードまで行ったことがあり、その画は私のマッターホルンへの思いにも通じるところがある。暫くマッターホルン談義となったが、芳野さんは、マッターホルンは近くで見るのが一番いいですよ、と仰っていた。ひけらかすような素振りは微塵もなく、控えめなお人柄である。「マッターホルンへ初めて登った日本人」という私の説明に対して、「いいえ、マッターホルン《の北壁》を初めて登った日本人です」とはっきり訂正された。そして、画の裏にはマッターホルンの「北壁」ということを注記してくれた。とても正直で静かな方である。

 それにしても今日は思いがけず、憧れのアルピニスト・芳野満彦さんとお話出来て、その上素晴らしい買い物(衝動買い?)をした。いずれ我が家の家宝になる?

2007年12月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com