1949年以来長らくいがみ合っていた同じ中国人国家同士の首脳、習近平・中国国家主席と馬英九・台湾総統が、昨日シンガポールで歴史的とも言える会談を行った。ほぼ半世紀前の台湾海峡における金門・馬祖島の砲撃事件や、当時の蒋介石・総統の反中言動を考えると大きな時代の流れを感じる。
かつて、「一つの中国」を主張し本家争いを演じていた中華人民共和国(中華人民共和国)と中華民国(台湾)が、歴史的な首脳会談を行ったのには、それなりの深慮遠謀がある。近年中国の覇権主義は留まるところを知らず、その領土拡張の海洋進出に対しては、南シナ海で周辺国の反発を招いているばかりでなく、アメリカが懸念を表明し、米艦船を派遣する有様である。一方の台湾は、中国の領土として併合されることは望んでいないが、その本音はともかく国民党の馬総統は国内の支持基盤が脆弱となり、党内においても存在感が薄れつつあることを意識して、乾坤一擲のエース・カードを切った節がある。
しかし、習主席の相変わらず自信たっぷりの表情に比べて、馬総統にはどことなく頼りない印象が拭いきれない。台湾国内でも、特に民主派の国民にとっては大国中国に呑みこまれることを警戒し、中国の狙いに引き込まれないよう、昨日の会合でもすべてに互角の話し合いの内に終始した。
確かに近年の中国の飛躍、発展ぶりには目を見張るものがある。ただ、強気の外交の反面国内では多くの問題を抱え、国民から目を逸らすために強気の外交に躍起となっている印象がしてならない。
実は、日常生活において中国国民が抱える不安と悩みの項目・上位10傑が、先月のウォールストリート・ジャーナル紙に紹介された。
それらは、①官僚の腐敗、②大気汚染、③水質汚染、④貧富の格差、⑤犯罪、⑥物価上昇、⑦食品の安全性、⑧商品の質、⑨医薬品の安全性、⑩医療、である。
いずれも首肯することが出来る。幸い日本ではあまり意識しない事象である。これらの懸念材料から国民の視点を逸らすために、中国政府は無理やり愛国心を駆り立て、国内で諸外国からの批判を封殺して自国の強大さと権利を主張し、結果的に外交面でトラブルを引き起こしているのが実態である。
中国については、40年ばかり以前に初めて訪れた時の印象が、街には車は少なく道路一杯に自転車が走る素朴な国、人民服を着た温和で優しい国民というイメージだったが、昨今の中国の全体像はテレビで見る限り大きく変わったようである。勝手な思い込みであるが、昔の中国が懐かしい。
台湾についても40年以上前の印象になるが、日本語が通じる親日的な国民で街でもあまり外国という違和感をあまり感じない国だった。今も親日的であるが、時とともにすべてに発展してやはり昔とは少し異なる印象が湧いてくるのは、当然と言えば当然だと思っている。
果たして、これら同じ中華民族が社会体制の違いを乗り越えて「一つの中国」になることは可能だろうか。
さて、ラグビーでまた快挙があった。今日香港で行われた7人制ラグビー・アジア選手権決勝戦をテレビ実況観戦していると、日本が香港に前半0-10とリードされながらも、後半盛り返し逆転して24-10で勝って優勝し、来年のリオ・オリンピックへの出場を決めた。今年はラグビー界にとって良いことずくめでつい嬉しくなる。