3109.2015年11月17日(火) 「フランスは今戦争状態にある」。

 今日のニュース・ワイドショーは昨日に引き続きパリのテロを大きく扱っている。オランド大統領はルイ王朝の栄光を伝えるヴェルサイユ宮殿に議会を招集し、全国会議員を前に、「フランスは今戦争状態にある。今回のテロが計画されたのがシリアで、組織されたのがベルギーである」と断言した。バルス首相は近々再びテロが起きる可能性があるとまで言っている。そこへロシア連邦保安庁は先月エジプト・シナイ半島で墜落したロシア民間航空機はテロの爆破によるものだとの声明を出した。ロシア政府はこれまでテロ説を否定していた。だが、ロシアはシリア政府支援のためIS空爆に参加してISから報復されたと受け取られることを恐れ、墜落原因は機体の爆発と主張していたところ、英米からテロ可能説が広がり、ロシアも立場上ISの仕返しであることを認めざるを得なくなったものと思われる。

 偶々今日駒澤大学講座で片山正彦講師が、メディアの誤報と虚報について講師自身の1984年3月号「世界」寄稿文を一例として、その前年に発生した大韓航空機墜落事件について講義された。当時のソ連政府の情報隠蔽と関係各国の洪水情報にソ連政府がしどろもどろになって、隠していた欺瞞が暴露されざるを得なくなった経緯を説明された。

 事件は1983年9月1日にサハリン上空で発生した。大韓航空ボーイング機の行方が飛行中忽然と消え世界を騒然とさせた。大韓航空機がソ連領上空で姿を消したことに疑いを持たれたソ連が、隠しきれなくなって事実を公表したのは、事件からかなり時間が経ってからだった。それまでソ連は偽情報を流していた。侵入したと称する民間機に対して何の警告も、航路変更のアドバイスをすることなくソ連機はズドンと一発やってしまったのである。申し開きが出来なくなったソ連が言い逃れと言い訳に終始したことで、この時ソ連は世界中の非難を浴びたのである。私にとってもこの事件は強く印象に残っていたので、僭越だったが、エピソードを披露させていただいた。

 実は、この事件直後のタイミングに旧文部省の教員海外事情視察団のお供で、旧東ドイツのカールマルクス・シュタット(現ケムニッツ)を訪れ、同地に宿泊しながら教育施設を訪問した。ソ連にとってのマイナス情報は東ドイツ国民には知らされていなかった。視察団には終始秘密警察が付きまとっていたので、下手に教育事情以外の質問は出来なかったが、ホテルのスタッフに韓国の航空機が墜落して乗客乗員全員が死亡したというビックニュースについてそっと尋ねてみたところ、誰も知らなかった。東ドイツ国民にはその事実は知らされていなかったのだ。初めてその事実を知って彼らはむしろ驚いていた。

 事実を曲げて伝えることはもちろん、事実を伝えないことは報道の自由が当たり前となっている現代ではあってはならないことである。だが、誤報と虚報、報道されないということが実際にあった時代と国家を考えても、昨今の政府のメディアに対する干渉を考えると、わが国だって五十歩百歩と言えるのではないだろうか。

2015年11月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com