喜寿を迎えた誕生日の「文化の日」から、朝日新聞朝刊に今までとは異色の連載スポーツ・コラムが今日まで20回に亘って連載された。スポーツ欄の3段記事だが、そのテーマが「あの夏1949年 決勝湘南×岐阜」と、何と母校湘南高対岐阜高の甲子園決勝戦にまつわるエピソードである。今夏の大会は旧制中等学校野球大会が始まってちょうど100年を迎えたのを記念して、主催者である朝日が取り上げた、謂わば高校野球エピソード集である。
題材として他にいくらも取り上げられるべき試合や学校があると思うが、その中で母校の優勝決定戦が特別に取り上げられたのは、終戦直後の暗い世相の中で、初出場初優勝という画期的にして、戦後初めて東日本勢として優勝校となったことが大きい。更にその後法政二高、東海大相模、横浜、桐蔭学園等々神奈川県高校の優勝に引き継がれ、強豪神奈川県に先鞭をつけたことが大きかったのではないか。加えて湘南は戦中から戦後にかけて文武両道の公立校でありながら、私立校を校内に併設させるという特殊な学校制度がしばらく続いたという特異な事情もあったと思う。
昨日採り上げられた「虚子もうなった『最美の力』」の話題は、昨年上梓した拙著「南太平洋の剛腕投手」の中でも紹介したエピソードである。これは2011年母校創立90周年記念に発行された「湘南90周年記念」誌からエッセンスを引用させてもらったものであり、元プロ野球・高橋ユニオンズで活躍された優勝時の1年生、佐々木信也さんから伺った話を味付けした。蛇足ながら来月開かれるユニオンズ同窓会で佐々木さんに託してこの拙著20冊を元選手や関係者に差し上げることになっている。
今朝の話題は湘南が甲子園で優勝したことに感激した鎌倉在住の野球好きの俳人、高浜虚子が湘南に贈った俳句について紹介した話に纏わるものである。
虚子が詠った句は、「秋風や 最美の力 唯盡す」というものである。
その俳句が書かれた短冊が、多くの人の手を介し巡りまわって近々湘南高歴史館に展示されるということも初めて知った。たかが高校野球だが、こういう風に人と場所を介してくるとフィクションも膨らんで深みのある物語となるものだ。今度湘南に出かけたら、ぜひとも歴史館で拝見してみたいと思っている。
偶々コラム上に第1回のエピソードとして紹介されたのが母校の栄光だったが、このように好意的に採り上げてもらえるとOBとしては、一層誇らしく嬉しい気持ちになるものである。