このところ政府、自民党内で急に浮上してきた話題に年金受給者への「臨時給付金」の配布がある。1億総活躍社会実現のための補正予算1.2兆円の内、1/4弱の3400億円がそれに充てられる。消費税の軽減税率対象品目の選定について、自民党と公明党の間で意見の調整がつかず、軽減税適用品目が打ち出せないうちに、自民党は公明党に対する融和策としてふわっと出してきた政府のバラマキである。
年金受給者を支援すると言えば、聞こえは好いが、あまりにも唐突ではないだろうか。前国会でまったく議論もされていなかった。それが突如世間の眼に晒されることになった。問題はそのやり方と中身である。この臨時給付金は、65歳以上で住民税非課税の約1100万人と年金収入などが年87万円以下の約600万人弱、年金87万円~155万円の約500万人、そして65歳未満の障害起訴年金と遺族基礎年金受給者約150万人を対象にしていて、その数は計約1250万人に当る。年金受給者約4000万人の内、その3割が3万円の臨時給付金をいただくようになる。残念ながら私はその中に入らず、ボーナスにあやかることは出来ない。
平素より高齢者社会と言われて、高齢者への厚遇が全般的に偏り過ぎているとの声がある中で、バランス的に高齢者に黙って補助することが公平なのかどうか首を傾げたくなる点がある。というのは、対象とされる高齢者は、すでに年金を受給している人たちであり、そのうえ住民税を免除されている人たちである。住民税免除ということは、すでに自分以外の人々の収めた税金によって補助されているということであり、そのうえ税金による補助を受けること自体、納税者の気持ちとしては納得がいかないのではないかと考えている。生活資金として不足気味であるとするなら、現在受給している年金の根拠をよく精査する必要がある。65歳の年金受給までに給料から自身収めた年金が少なかったために、相当の年金を受給しているのである。収めた年金額が少なかったことで、それを今更補助してもらうのは、他の納税者にとっても納得出来ない話だと思う。
なぜこういう話が不意に現れるのか。1億総活躍社会の実現のために、国民が大いに物を買ってもらって消費額を増やしたいとの偏った考え方のせいである。しかし、本音はこの政策によって自民党は彼らの感謝の気持ちをいただき、来年の参議院選挙で票を得たいためである。これ即ちバラマキ以外の何物でもない。財源が厳しく、国が抱える借金が1千兆円を超える中で、どうしてこのようま巨額の投資が大した議論もなく、突然出てくるのか理解に苦しむ。これだから政治家は益々信頼することが出来ない。
さて一昨日打ち上げられた宇宙航空開発研究機構(JAXA)の金星探査機「あかつき」が、今夕金星の周回軌道の投入に成功したとJAXAが発表した。日本の探査機が地球以外の惑星の周回軌道に入ったのは初めてである。これで「あかつき」は金星の重力圏に捉えられ衛星になったということになる。5年前に打ち上げられた「あかつき」は金星の周回軌道に入ることが出来ず、2度と金星への周回軌道投入は難しいと見られていたが、条件が更に厳しくなった今回敢えて挑戦し、それを成功させたというから日本の科学界の進歩には目覚ましいものがある。
明日ストックホルムで今年のノーベル賞受賞者の表彰式があるが、今年も日本の科学者が2人も受賞した。日本の科学の将来に益々明るい光を見せてくれている。
ダメなのは政治と政治家だ。