3134.2015年12月12日(土) アメリカ大統領レースでトランプ人気の危うさ

 来年のアメリカ大統領選挙を目指して民主、共和両党内の候補者指名権争いが加速している。民主党ではヒラリー・クリントン前国務長官が安定して戦い指名候補を獲得しそうであるが、野党の共和党内の争いが過熱している。父と兄が大統領で、当初は勢いのあったジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は、完全に他の候補者の後塵を拝して6位にまで落ちた。その中で政治家としてはまったくの素人である1位の不動産王ドナルド・トランプ氏と2位の神経外科医ベン・カーソン氏が抜きん出ている。その中でトランプ氏があまりにも放言と過激な発言を繰り返すので顰蹙を買っていたが、ここへ来て「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」と発言して、世界中で物議を醸している。

 トランプ氏はこれまでも度々脱線発言や過激発言があったが、今度ばかりは偶々パリ同時テロに便乗してイスラム教徒を排斥しようとの意図ありと見られ、世界中から総スカンを食っている。近々アラブ・イスラム国と対立するイスラエルを訪問予定だったが、そのイスラエルのネタニヤフ首相からさえ発言は受け入れられないと反発された。また、イスラエル国会議員からトランプ氏との会談を中止するよう求められ、風当たりが強くなったトランプ氏は訪問を断念せざるを得なくなった。その他にも英仏を始め、アラブ諸国から訪問拒否の署名が集められるなど、トランプ外交は頓挫することになった。

 そもそもこれだけ内向き志向の右翼的発言を続ければ、必ず反対意見が出て撤回や修正を迫られるのが普通である。だが、トランプ氏は言いたい放題喋り続けて、それが却って一部の極右派からは支持されていた。それ自体少々異常である。

 大体トランプ氏の言葉と主張は棘が多過ぎる。アメリカ社会は移民によって出来上がったものではなかったのか。それにも拘わらず、建国の歴史を忘れ、いかにイスラム系民族が気に入らないにせよ移民を排除しようとアピールすることは不遜であり、アメリカ独立に貢献した初期の移民に対して失礼千万でもある。それが、どうして保守的なアメリカ人に受け入れられるようになったのか、不思議でならない。仮にトランプ氏が大統領に選出されるような奇跡が起きたら、アメリカ国民が世界中から非難を浴び、すべてにおいてアメリカ人の行動は厳しい眼で見られるようになるだろう。そして、ヨーロッパの一部の国でトランプ入国を拒否しようとの動きがあるくらいだから、アメリカ大統領が外国歴訪も出来ないなんてこともあり得る。

 そのトランプ氏はわが国や中国にとっても厄介な相手となる。特に誤解と事実誤認に基づく日本批判の激しい人物である。

 いずれにせよ他人のことを気にせず、言いたい放題のトランプ氏のような人物が大統領になったら、世界中にショックを与え、世界中が混乱するだろう。アメリカ人の良識を信頼して、このような人物がまさか大統領になんかはならないと信じてはいる。

2015年12月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com