豚インフルエンザが猛威を振るいだした。新聞、テレビのニュースのトップ記事はすべてこの新型インフルエンザに関するものである。世界保健機構(WHO)は警戒水準を一昨日「フェーズ3」から「フェーズ4」へ上げたが、今日更にその一段階上の「フェーズ5」へ引き上げた。WHOの「フェーズ」分類は6つに分けられており、上から2番目の警戒水準になったのは、WHOの一地域に属する2ヶ国以上で新型による感染が継続している状態になったからである。一昨日メキシコにしか死者が出ていなかったのに、昨日ニューヨークで1歳児が亡くなったのを受けて水準を上げたわけである。世界中を挙げて大騒ぎである。
ところでどうしてマス・メディアはこの「フェーズ」という言葉の詳しい解説をしてくれないのだろう。「フェーズ」なんて言葉の語源を知っている人がどのくらいいるだろう。もう一週間近く話題になっていながら、この期に及んでまだどの新聞でも、テレビでも解説してくれない。マス・メディアの人たちはその意味を知っているのだろうか。そんな言葉ぐらい誰でも知っていると思っているのだろう。こういう好い加減で思い上がったところが、メディアの頼りにならず許せない点である。止むを得ず、昨日インターネットで調べたら‘PHASE’というスペルだった。時期とか、段階だとか、或いは相というような意味で、これなら分かるが、これまで頭はPHAではなくFAから始まると思っていたのでまったく見当がつかなかった。マス・メディアの報道の役割というのはどうなっているのだろうか。
先日グーグル社の書籍検索に関する諾否のアンケートが日本文芸家協会から送られ回答を郵送したが、これについて日本の作家や出版社も戸惑っている。昨日日経紙の記事や、今日のNHKニュースを見るとデジタル化の対象になっている4,300人の作家に送ったアンケートで、8割強の人が完全削除を求めたとあった。僅か293人がデジタル化と表示を容認して収益の分配を受けるという。私はその293人の中のひとりに入っている。若干和解を勧める協会の誘導質問に乗ってしまった形だが、私の場合は必ずしも文筆で食べているのではないので、真剣味が足りない回答になっていたようだ。大江健三郎のごときは、150冊もの著作があるので、当然グーグルへ削除を求めるのは頷ける。それにしてもグーグルの知的暴力には憤懣やる方ないが、判断が難しい問題である。