720.2009年5月3日(日) 憲法記念日に民放は憲法論議なし

 今日は憲法記念日で、今朝の新聞を見るとそれなりに憲法論を取り上げている。その中で朝日新聞の全面「意見広告」掲載が目を引いた。一時流行った市民の意見を訴える手法で、ニューヨーク・タイムズへ載せたベトナム反戦意見広告で有名になった。

 意見広告は、「市民意見広告運動事務局」が8,395件の賛成を得て掲載したもので、「戦争をとめよう!人間らしく生きたい」と訴えている。その根幹は日本国憲法9条「戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認」と、第25条「生存権―人間らしく生きる権利」を強く打ち出している。反改憲歌も4つばかり発表されている。

 「地球村の大人等愚か武器購う隣で飢えし児明日死にゆくに」

 「爆音のとどろく吾子の部屋にいて九条切に守らんとぞす」

 「七割は餓死と知らさる『英霊』の夏」

 「九条に羽つけガザの子包みたし」

それぞれ反戦の気持ちが表れている。

 テレビではNHKだけがスペシャル番組を流した。「天皇と帝国憲法『万世一系』はこう書かれた」で天皇機関説について評論家・立花隆と御厨貴・東大教授がそれぞれ分かりやすく解説してくれた。特に、政党政治の始まりから軍部と右翼の台頭、2.26事件、満州事変、大東亜戦争への流れをフィルムを交えて紹介していた。その中で印象に残ったのは、天皇機関説を主張した美濃部達吉教授とそれに反対した上杉慎吉教授の対立論争と、上杉教授の右傾化思想に浮かされた東大生、更に上杉教授の取り巻き学生によって引き起こされた連続的テロ事件等々である。昭和初期の一連の危険な動きを分かりやすく教えてくれた。こういう番組はやはり劣化している民放テレビでは期待出来ないことを感じさせられた。どこのテレビ局にも硬派の憲法番組がまったくなかったからである。

 朝日の世論調査によると九条改正に反対する人が64%だという。しかし、これも条件付きなので実際にどの程度の国民が現在の憲法に賛成しているのか、反対しているのか分かりにくい。そこで以前から一部に改憲論争が浮上していたが、このところそれは下火になってしまった。目先の経済対策が先決で憲法まで手が廻らないというのが本音だろう。しかし、いつまでも憲法論議を放っておくことは出来ないだろう。実際に現憲法下で自衛隊の海外派遣も行われている。イラク特措法のように、時限立法もあったが、海賊対策のための海上自衛隊ソマリア沖派遣は恒久法の匂いがする。そろそろ期限を定めて憲法と正面から向かい合って議論を進め、結論を出すべき時に来ているのではないか。

 安倍首相時に憲法改正の動きが出た時は、安倍シンパが動きかかったが、今は動くのはあまり得策でないと悟ったのか、利に敏い政治家は相変わらず動こうとしない。一体日本憲法は誰のものなんだ。

2009年5月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com