721.2009年5月4日(月) ジャック・アタリ氏の資本主義経済論

 午前中フランスの経済学者であり、歴史学者であり、思想家でもあるジャック・アタリ氏に対する長崎泰裕・NHKヨーロッパ総支局長による45分間のインタビュー番組「危機の中で未来を考える」シリーズの第1回「危機の核心は何か?」を見た。

 すでに2005年時点でアメリカの金融危機の徴候を感じていたと言われている人物である。アタリ氏は単に象牙の塔に篭った学者ではなく、ヨーロッパ復興銀行総裁、更にミッテラン大統領の経済顧問も務めて実態経済をつぶさに実体験しているだけにその主張には説得力がある。

 アメリカの金融危機については、グローバルな資本主義にルールや規制がなかったことと、アメリカ金融業界が「何でも解決出来る」と予想出来るリスクを軽視したことが原因であると指摘された。グローバルな市場はできたが、グローバルな民主主義とグローバルなルールがなかったことが致命傷と指摘されたのである。更に金融業界には過去のバブルの反省もないと手厳しい。

 改めて学んだことは、資本主義市場最初の市場となった、14世紀ブルージュ(ベルギー)では、国家や教会から離れて商業ルールの下に商人中心の市場が栄えたことである。以降ベネチア、アントワープ、アムステルダムも国家や教会の壁を越えて市場が繁栄した。市場の拠点というのは、時代ごとに移り変わるものであると持論を展開される。18世紀のイギリス、19世紀のアメリカ東部、そして20世紀のロスアンゼルスも同じように市場は移動している。

 今後グローバル市場の候補地として期待されるのは、中国であり、インドであるが、問題は中国には国内問題と官僚社会があり、インドにも国内問題がある。1970年代に日本市場はアメリカに次ぐ世界市場になるとの期待があったが、その可能性が消滅したのは日本の政治状況と国際市場への準備を怠ったことであると辛辣である。

 今後アメリカがこれまでのように世界をリードすることは難しいだろうが、やはり世界のリーダーとして存在感はあるだろうし牽引車となるだろう。しかし、これまでに比べて連邦政府が大きな政府となり、保護主義が強まり内向きになるだろう。従って日本を含めて外国への関与も少なくなるだろう。

 これからは資本主義の中に民主主義が配慮され、社会的支出と公的支出のバランスが重要になると結論づけた。早速自由が丘の書店に著書「21世紀の歴史」を求めに行ったが、置いてなく夕食に妻と出かけた玉川高島屋内の紀伊国屋書店にもなかった。発行元・作品社の書物は取り扱っていないらしい。近くの書店に注文するより方法はない。

 世界中を席捲している豚インフルエンザだが、メキシコで感染したカナダ人の豚舎従業員が帰国後仕事中飼育している豚に感染させて相当数の豚が豚インフルエンザに感染した。人間を介して豚インフルエンザを豚に感染させたという、まるで漫画のような話である。

2009年5月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com