テレビ朝日の「報道ステーション」で12年間キャスターを務めていた古館伊知郎氏が、来年3月を以って降板する。当番組は久米宏氏が切り開いた人気番組「ニュース・ステーション」を引き継ぎ、2004年アテネ・オリンピック開催の年にスタートして、視聴率もまずまずの成績だった。それだけに古館側にこれと言う失点があったわけでもないのに、なぜ止めるのかとの声が社内外からあり、テレビ朝日側も慰留に努めていたと聞く。古館氏当人は新しい分野の仕事をしてみたいと言っているようだが、そのまま額面通りに信じるわけにはいかないようだ。
今年に入ってから2月に放送倫理・番組向上機構(BPO)が同番組の川内原発を巡る報道について意見書を公表したり、3月には元経産省官僚の古賀茂明氏の官邸バッシング問題を巡って番組内で激しい応酬があったり、とかくの物議を醸していた。
それでも古館氏は自説を曲げず一貫した対応に終始していた。だが、政府・自民党が同番組と古館キャスターに対する不当な介入とも受け取られかねない、嫌がらせは加熱する一方だった。その後一応事態は収まったかに見えたが、古館氏の心中は複雑だったようで、官邸サイドの横やりとテレビ朝日の弱腰に許せないものを感じたのではないかと推察することが出来る。結局今日古館降板を古館本人とテレビ朝日が正式に発表して、古館氏は切り込み鋭く一本筋の通った硬派番組キャスターから去ることになった。後任に誰が就くのか不明だが、ちょっと惜しい気がする。
さて、このところ中国の経済特区・深圳で土砂崩落による建物倒壊のため多くの住民が土砂に呑みこまれ今なお70人以上の行方が不明になっている。度々繰り返される中国の人災による大事故はひきも切らない。6月には湖北省の長江で客船が転覆して400人以上の犠牲者を出した。8月には天津市内の倉庫爆発事故で170人以上が亡くなっている。このような大型の災難が起きるというのは、国の管理が十分徹底していないこともあるが、同時に国と国民の間に人命の大切さとそれを守るべき安全対策への理解と考えが充分でないところに根本的な原因があると思う。
特に中国政府の安全対策は不充分で、法整備も充分でなく、この種の事故が発生すると情報公開どころか、事故を隠蔽しようとする姿勢が露骨で、このままでは更に度々事故は繰り返されるのではないかと心配でならない。
最近大気汚染について北京市内では頻りに赤色警報が出されている。PM2.5を超える汚染度の高い日が3日間も続いた。日本の最悪の汚染に比べても10倍の酷さである。これに対して現時点で政府は何の防止対策も打ち出していない。国としてどうすべきか、また今後の防止策を国民に対してまったく説明しようとしないのだ。ただ、出来るだけ外出しないように、或いは外出する時は、必ずマスクを着用するようにとおざなりの注意をしているだけである。これでは、国民に対して健康面で何の手も打たないのと同じ事だ。
中国政府はもう少し国家、国民に対して優しく責任を果たすべきだと思うのだが、所詮日本人がいくら言っても片腹痛いだけで、余計なお世話だろうか。