736.2009年5月19日(火) 心配なスリランカとビルマの国内事情

 やはりスリランカの反政府武装勢力「タミール・イスラム解放の虎(LTTE)」プラバカラン議長が殺害された。これで一応4半世紀に亘った内戦が終結したことになる。しかし、これですべてが解決したわけではない。根源にあるのは民族対立であり、反って対立は増幅され、地下に潜って陰湿なテロなどに走らなければよいがと気がかりである。

 今度の内戦によって改めて深刻なスリランカ国内事情を知った。スリランカではシンハラ人が人口の70%強を占める。彼らはほとんどが仏教徒で、国の公用語もシンハラ語で、国は仏教保護政策を行っている。これでは人口20%弱の少数派であるタミール人が、反発するのも無理からぬ話である。首都コロンボでは、シンハラ人がお祭騒ぎをしているようだが、早くも一部にはタミール人を2級国民扱いにしている者がいるとタミール人は憤慨し、タミールの文化やアイデンティティーも否定されるのではないかと憂慮している。このまま放っておくと虐げられた者の圧制者への憎しみばかりが募ってくる。異民族、異文化への軽視、蔑視が時代を超えて内在化され、いずれ顕在化してくる。こういう民族間の醜い戦いは、嫌なものだ。しばらくスリランカ情勢から目が離せない。

 さて、ビルマでは国家防御法違反で刑事訴追された、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんの裁判がインセイン刑務所内法廷で始まった。強硬な軍事政権にはそれなりの思惑があってスー・チーさんを逮捕しただけに、強圧的で民主的な体制とは程遠い。この仕打ちが国民の誰もが敬愛する国父アウン・サン将軍の娘に対するやり方かと言いたい。暗殺された独立の士・アウン・サン将軍はビルマ国民の信頼を一身に集め、「ボ・モ・ジョ(将軍)」と呼ばれ、その愛称はラングーン市内の通りや、ラングーン(ヤンゴン)市内最大のマーケットにも冠せられているくらいである。今のビルマ軍政首脳にとっても、近寄り難い存在の大先輩だったはずである。

 まず、当局側による冒頭陳述はあったが、スー・チーさんには罪状認否など発言の機会も与えられなかった。各国大使の傍聴も拒否された。武装警官隊により刑務所への道路をすべて封鎖してスー・チーさんの支持者を排除した。世界各地でスー・チーさんの即時解放を求めてデモを行った。私もかつて何度も訪れたことのある東京のビルマ大使館前でも数百人のビルマ人が抗議活動をした。中曽根外相もビルマ政府のニャン・ウィン外相に直接電話して道的配慮を要請した。しかし、軍政には今のところ取り合う気持ちはまったくない。スー・チーさんは多分3~5年の刑期を重ねられるだろう。理不尽な話である。

2009年5月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com