738.2009年5月21日(木) 寺島実郎講師が語る日米中トライアングル

 多摩大学の公開講座は、寺島実郎講師2度目の講義である。今日のテーマは「世界潮流の中での日本―日米関係とアジアへの視座」と題して、日米中関係について歴史的視点から分かりやすく解説してくれた。

 冒頭寺島氏は「日米関係は米中関係」との松本重治氏の言葉を紹介された。日米2カ国関係の奥に米中関係があると指摘された。次いで1993年に放映されたNHK特集「トライアングル・クライシス」を1時間に亘って観ることになった。かなり古い特集番組で画面もあまり鮮明ではなかったが、当時三井物産㈱ワシントン戦略研究所長を務めていた寺島氏がリポーターとなって、米中関係が日米関係とは異なることを、タイム&ライフ誌オーナーのヘンリー・ルースの中国人的視点からの分析と、日米・米中関係についての日米の異なる観察を説明することによって解説した点が、新鮮な感じに思えた。

 この特集番組の質的レベルが高いのには感心させられた。資料を提供したと思われる寺島氏の着眼点もすごいと思うが、トライアングル・クライシスを追求して分かりやすく説明した努力には一層頭が下がった。

 アメリカ人の中国と中国人に対する見方は、ルースの出自と生い立ちから身についた中国観に裏打ちされている。それは対中21か条の要求で反日感情が高まり日本が占領した山東半島で生まれ成長したルースが、中国人に同情してチャイナ・ロビーになっていった背景がある。僅か24歳で「TIME」を創刊し、1936年9月のJAPAN特集号で指摘した日本に関する情報の重みと質の高さを注目すべきであるとも寺島氏は言われた。1937年には「LIFE」を創刊して反日キャンペーンを煽った。これに利用されたのが蒋介石と宋美齢夫人だった。モンロー主義のアメリカは対中侵略の日本には余計な手は出さないだろうとの日本の思惑も、国際連盟脱退やルーズベルト大統領の独自観とチャイナ・ロビーの巧妙な舞台回しによってモンロー主義から脱皮していくアメリカによって、ついに対日戦争開戦へ向かわせられた。

 昔の中国を好んでいたルースは、共産主義を嫌っていた。アメリカの対中政策も混迷した。1945年に始まった国共内戦がなければ、日本は中国に遥かに遅れ、発展が30年は遅れただろうと言われている。

 アメリカ人は日本人より中国人が好きだったという話は、中国の共産化と朝鮮戦争によって覆った。中々深みのある、ドラマチックな話で実に面白かった。

2009年5月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com