星槎大学湘南大磯キャンパスで「日本共生科学会」設立総会が開かれた。前もって小中陽太郎氏から参加の案内をいただいていたので、小中さんがキー・ノート・スピーカーとして講演するということ、そして「共生」というのは何だろうとの好奇心もあってJR大磯駅から迎えのマイクロ・バスで会場へ行った。多少予想はしていたが、地元の地理によほど詳しくないと行き着けないような森林地帯の中にキャンパスはあった。元々修道院として使われていた施設だというのも頷ける。これも自然との共生を志向するグループの理念に合致していると感じた。
キャンパスは学校法人、社会福祉法人、NPO法人、農業生産法人である星槎グループが北海道から神奈川、東京、埼玉、静岡、大阪、広島、福岡、沖縄、福井、富山、宮城、福島県内各地にまたがる通信教育、特殊教育中心の人間教育を行っているネットワークのひとつである。大学は北海道芦別市に存在するが、日本のみならず世界でも唯一の共生科学部を持つ大学ではないかと主催者が語っていた。
議事進行は順調に進み、シンポジウムもパネリストの話が興味深く大変有益なものだった。参加者が真剣に説明する態度にケレン味がない。とにかく真面目である。日本共生科学会初代会長に推薦された山口薫氏が、就任挨拶の中で、①人と人との共生、②人と自然との共生、③国と国との共生、を目指すと話され、自然科学、社会科学、人文科学の後の科学の分野に共生科学が処せられるべきだと思うとの熱い願いを語られた。
懇親会で多くの大学関係者と話をしたが、年配の先生の表情にもポジティブなひたむきさが窺えた。創立者の宮沢保夫・グループ会長兼議長は私より若いが、37年前に生徒たった2人からスタートしたとその苦労話をしてくれた。
建学の精神は「社会に必要とされることを創造し、常に新たな道を切り開き、それを成し遂げる」である。教育理念は「必要とする人々のために新たな道を創造し、人々が共生しえる社会の実現をめざし、それを成し遂げる」。教育目標には「困難な場面において相手を想い、笑顔と勇気を持って立ち向かう強い心の育成」を掲げている。それぞれに志が高い。
この他にもいくつかモットーがあって、校訓には①労働=人のために働くこと、②感謝=いつも感謝する気持ちを忘れないこと、③努力=努力をし続け、決してあきらめないこと、を詠い、ビュッフェの割り箸袋にも「星槎3つの約束」と書かれていて①人を排除しない、②人を認める、③仲間を作る、この3つが標語である。モットーやスローガンの好きなグループであるが、目指すところは人間学ではないかと推測している。
グループの理念と学会の主旨に大いに賛同したので、今後の発展に寄与出来るかどうか分からないが、早速会員になることにした。帰途横浜駅前の崎陽軒で小中ご夫妻から出版関係のお2人ともども中華と紹興酒をご馳走になる。
さて、1945年の今日、ヨーロッパ戦線ではノルマンディー上陸作戦が敢行された。この上陸作戦から連合軍の怒涛の進撃が始まり、ドイツ軍は敗走に次ぐ敗走で雪崩を打つように後退した。思い起こせば、あの海岸の近くにある戦没者記念墓地では慰霊祭が行われるのだろう。広大な場所に整然と区画わけされた墓地には、生花が飾られていた。イスラエル兵の墓地だけが、すぐ目に付いた。日本が敗戦を受け入れたのはその2ヵ月後である。