日韓両国間の大きな懸案となっていた従軍慰安婦問題をめぐる協議が、両国間で急転直下合意した。アメリカ政府は歓迎声明を出し、メディアでは‘The New York Times’が「画期的な解決」とし、またイギリスのBBCも「歴史的な解決」と高く評価している。
少々唐突な印象がある慰安婦問題解決に向けた動きは、今日日本から岸田文雄外相が韓国を訪れ、日韓外相会談で大筋まとまった。これほどの大きな懸案事項が両国の首脳会談でなく、外交のトップの話し合いで合意するというのは珍しいことだと思う。
この合意の背景には、日本政府が旧日本軍の関与を認め、「責任を痛感する」とともに、安倍首相が「心からお詫びと反省の気持ちを表明」し、韓国政府が元慰安婦支援のための財団を設立し、日本がその資金10億円を一括拠出するということにも合意が出来たことがある。
ここへ来て懸案解決の動きが出て来たのは、アメリカ政府が日韓対立の現状は東アジアの安全保障面で悪影響を及ぼし、まったく資することはないと早期の決着を求めていたことが大きく作用している。更に韓国国内の一部に最近になっていつまでも日本との対立関係が続くことは、現在経済が低迷している韓国にとっても決してプラスにならないとの声があり、韓国が一歩譲った形になった。
しかし、問題は全面解決したわけではなく、ソウルの日本大使館前に建立された慰安婦をイメージする少女像を日本が撤去を申し入れているが、韓国政府は民間団体が建てた像で、直ぐ撤去することは出来ないが、撤去へ向けて行動すると韓国から言質を得たことに期待したい。更に、日韓国交回復50周年の今年、両国間に何らの友好的な動きがなかったことから両国政府に少しでも実績を残したいとの気持ちがあった。問題は50年前に日韓両国政府が日韓請求権協定で完全に、かつ最終的に解決とした問題が蒸し返された今回の事例を、再び繰り返すことがないよう「不可逆的」に解決されることを確認したことが日本政府を合意に踏み切らせたと考えている。それにしても「不可逆的」なんて難しい文言を使用しているが、化学で反応した場合に使う言葉で、果たして安倍首相には本当の意味が分かっているだろうか。
さて、先日あれだけすったもんだした食料品の軽減税率が政府与党内で決着してから、その直後にホッとした隙間を突くように、自民党と公明党が手に手を取って鮮やかに新聞購読料の軽減税率を簡単に決めてしまった。メディアでも話題としてさほど取り上げない新聞の軽減税率適用には少々唖然としていた。ひょっとすると見えないところで裏取引があるのではないかと勘ぐっていた。
元々「聖教新聞」は、学会員が購読しているが、今や読売、朝日に次ぐ購読者数公称550万を数える「隠れた大新聞」で、創価学会を支える財政基盤になっているらしい。自民党もこの学会員の不評を買いたくないあまり公明党の計略に妥協し、新聞の軽減税率の片棒を担ぐ羽目になったようだ。ちょっと姑息なやり方のような気がする。
月刊誌「選択」1月号によると、9月に成案した安保関連法案に賛成した与党公明党に対して、支持母体である創価学会員が猛烈に反対していたが、この詫びとお返しで公明党が創価学会の機関紙「聖教新聞」への増税を見逃すために新聞の軽減税率適用を実現させたと見られているようだ。
「編集後記」では、「消費税の軽減税率の対象に宅配新聞がスルッと入った、その理由は政権与党と新聞社が談合したから。引き換えに、生ぬるい政治記事しか読者に読ませないようにするなら、何のための民主主義の責務やら、失笑噴飯な話だ」と手厳しい。実際その通りだと思う。