恒例の春闘のベースとなる賃上げもまとまったようだが、連合の発表によると定期昇給を含む正社員の賃上げ率は、平均5.4%となり、昨年同期を0.15%上回った。ただ、連合に加盟していない中小企業では賃上げ率は5%台を割り込んだようである。
他方新卒採用の売り手市場の影響により、人材争奪戦の中で新入社員への給与は上がり「初任給30万円」の声も聞かれるほどである。ユニクロを経営するファーストリテイリング社は初任給を33万円に引き上げたというから、62年前に社会人になった時の私の初任給18,000円なんて恥ずかしいくらいである。収入は当然全般的に上がることになるが、昨今の物価値上げ現象により消費者の生活は一向に向上しない。とりわけ生活に直接影響のある食品の値上げが著しい。中でも主食の米代の値上げが激しく、昨年2月には5㎏2,045円だった米が、ほんの1年の間の今年3月には4,077円にまで値上がりした。1年間に2倍になったことになる。
その最大の原因として挙げられるのは、猛暑、台風などの自然災害による生産量の減少、投機的取引の他に、集荷競争の過熱により、従来の集荷業者だけでなくこれまで取り扱ってこなかった業者などが米を集めた結果、米の所在が分からなくなったということが言われている。そのため急遽輸入米を増やした。それも今年1月1か月間の輸入米は、2023年度1年分を超えるほどの量となった。それでも市場の米不足は収まらず、先月政府は備蓄米21万㌧を市場に放出することを発表した。政府の備蓄米を放出するのは初めてである。
かつては、米の生産と消費で米の国と言われ増産政策を取っていた日本が、その後米の過剰に悩み、挙句に米の減反政策へ切り替える有様だった。
今から70年前の高校生のころ、日本の人口は約8千万人だった。当時日本人の米の消費は年間8千万石と言われ、国内の生産量は遥かに足りない6千万石でしかなく、不足分2千万石は外米の輸入に頼っていたものである。それが、その後増産政策により米の供給が需要を上回るようになり、今度は生産を抑制するために減反政策に切り替え、耕作の田畑が大きく減少した。これによって農業人口も減り、今また増産を施行しようにも不可能な状態になってしまった。二転三転した農業政策の失敗のツケが、今日の米の値上げに大きく影響している。
米の生産量減少は、上記のように農業人口の減少が大きい。それは米のみならず、田畑で栽培される他の食物にも見られる。特に野菜の値が上がりっ放しで、これは備蓄されるようなものではなく、農家の手によって生産されるものである。例えば、昨年の同月に比べて、キャベツは30.5%、ハクサイは29%、トマト23.1%、みかん37.5%も値上げされている。これはある程度気象条件に左右されるものであるが、日本の農業行政の在り方も問われなければならないと思っている。