日本の財政に大きく貢献しているインバウンド客がコロナ渦により一時減ったが、コロナを脱してから再び回復に向かっている。1月に日本を訪れた外国人観光客の数は、378万人で1か月間の訪日旅行者数としては過去最多である。2024年の訪日観光客数も過去最多の約3千7百万人を数え、前年より5百万人も増えた。予想以上に順調な回復ぶりである。これには、財務省も内心ホクホクであろう。
ところが、観光業繁栄の陰で人気観光地では、オーバー・ツーリズム現象が問題を提起している。訪問地におけるインフラ施設の受け入れ対応が追い付かず、観光地によっては自治体が音を上げているのが実態である。そこで近年各観光地では宿泊客に宿泊税を課することを検討し始めた。北海道倶知安町の宿泊料の2%という定率制以外はほぼ定額制を採り入れている。東京都でも1人当たり100円~200円の宿泊税を徴収している。ところが、京都市が来年3月を機に一気に宿泊税を値上げすることを決定した。現在までのところ宿泊料金の2万円未満200円、2万円以上5万円未満500円、5万円以上千円の3段階だったが、これをそれぞれ値上げして、更に2段階加えて6千円未満200円、6千円以上2万円未満400円、2万円以上5万円未満千円、5万円以上10万円未満4千円、そして5段階目が10万円以上として1万円の宿泊税を課す計画である。
10万円以上の宿泊料を支払う観光客は、全体の約0.5%で全般的には大きな影響はないようだが、老舗旅館の経営者の間からは観光客から敬遠される可能性があるとして反対を唱える声もある。
今外国人観光客を多く受け入れている都市の中には、飽和状態の施設面、交通障害など都市独自では解決が難しい問題が派生している。京都市では、市内バスの利用などに関して市民優先料金制などを適用して市民が公の施設を利用しやすい工夫もしている。その他に市は観光分散化の取り組みを実施して、その成果が現れたとも説明している。それは京都市内の主要な観光地で、外国人が増えた一方で日本人が訪れることが少なくなった現象にも表れている。例えば、外国人が46%も増えたが日本人が23%も減少した伏見稲荷や、先斗町に近い花見小路では、外国人29%の増加に対して日本人19%の減少、河原町の錦市場では、外国人42%増に対して日本人16%減、人気の嵐山渡月橋でも、外国人24%増に対して日本人11%減となっている。他にも同じような現象の観光地はかなりある。
他に最近問題になっているのは、北海道函館地区の函館湾や、青函連絡船摩周丸などが眼下に広がる函館市内の八幡坂で、外国人観光客などが車道に出て写真を撮るマナー違反が顕在化していることである。近隣の私有地や学校内敷地にまで無断で立ち寄るケースも散見され、市がSNSで自粛を呼び掛けている。
こういうオーバー・ツーリズムは日本にばかり起きた現象ではなく、今では世界的な観光地では大きな問題となり、訪問客に対して課税している都市もある。例えば、イタリアのヴェネチアでは、2024年から特定の日に日帰り観光客に対して入島税を課している。日本でも徴収する関所のような場所の設営に悩むところだが、そろそろ検討することも考えて良いのではないかと愚考する。
観光業が益々栄えて国の財政に好影響をもたらすならば、国は自治体だけに任せるのではなく、ある面で自治体に協力する姿勢を示すべきではないだろうか。