デヴィ夫人こと、デヴィ・スカルノ元インドネシア大統領夫人が、去る12日に政治新党結成と、自身参議院選全国区比例代表として立候補することを公表して、少なからず世間を驚かせている。85歳高齢の今も相変わらず派手な立ち回りで、テレビ出演やCMなどでしばしば目にするほど活動している。時折大相撲の桟敷席で華やかなドレスで観戦している光景が、テレビ画面に映し出されることもある。その派手好きで目立ちたがりやの女性が、何を考えたのか、この期に及んで自ら政党「12平和党」を結成し、党首に収まり国会議員になろうとしている。政党のテーマは、犬、猫と人間が協調する社会を作るという童話のような政策であるが、読み方も「ワンニャン平和党」と呼ぶようで、猫の好きなデヴィ夫人らしい。しかし、名前もやや悪乗りしてふざけたような印象を与える。少々政治の世界を軽視しているようにも感じられる。
近年政治的理念や確たる信念を抱いて政界へ出ようという人物が少なくなった。成り上がりものが、資金的に余裕があるのか、やたらと立候補する動きがある。NHK党党首の立花孝志氏や、つばさの党党首の黒川敦彦氏のように全国を飛び回って売名行為のように中央政界入りに限らず、地方自治体の選挙に度々立候補している。彼らの行動には、真剣さとか誠実さがあまり見られない。立花氏が別の候補者、斎藤元彦・兵庫県知事を当選させるために立候補したケースや、黒川氏が昨年4月衆議院東京15区補欠選挙における立候補と他候補への妨害行為で起訴処分を受けたような例もある。黒川氏に至っては、今年1月にも東京千代田区長選に出たが最下位だった。昨日行われた埼玉県朝霞市長選でも4人の立候補者の中で最下位、市長当選者より2桁も少ない獲得票だった。とても知名度を上げること以外にとてもその真意と目標は考えられない。
しかい、デヴィ夫人にとってはいくつかクリアしなければならない大切なハードルがある。まず、日本を代表する日本の国会議員になるためには、当然ながら日本国籍を取得していなければならない。彼女はスカルノ元大統領の何人目かの夫人であり、正式に大統領と結婚しており、インドネシア国籍を有している。その際インドネシア国籍の取得と同時に、日本国籍を放棄した。先ずは、日本国籍を復活させなければいけない。そして、彼女が顔を出すテレビCMが問題視されるので、契約を解除し、その折スポンサーに違約金を支払わなければならないことである。
それにしても、上記の例のように最近選挙に出ることだけを目標にしている政治家志望の人物が多く現れている。また、立花氏が。自分自身のためばかりでなく他の候補者を当選させるために立候補するケースである。これについては、昨日平井伸治・鳥取県知事ら19府県知事が、政府や国会に対策を求める緊急の声明を発表したほどである。
最近選挙自体を軽視するのか、他の目的のために利用しようというのか、立候補者、その関係者、更に選挙そのもののレベルが劣化したように感じられる。彼らにはやや公徳心に欠けるところがあるのではないかと懸念している。更に言うなら、自身が立候補することによって公職選挙に余計な経費や負担をかけてはいないだろうかと真剣に考えたことがあるだろうか。
いずれにせよ、デヴィ夫人の政党創設については断は下されたようだ。メディアも興味本位の取材と報告をするだろうが、新党の犬と猫との共生社会を目指すとの公約や政策方針を、国民が素直に受け入れるだろうか。
国民及び国政に対する責任感や、真面目さが足りないように感じられてならない。