6482.2025年2月10日(月) 戦争を予感させる極右派の動き

 今年は第2次世界大戦終戦80年に当たり、日本でも太平洋戦争終戦、及び広島、長崎原爆被災80年でもある。ヨーロッパではナチス・ドイツによるホロコースト・大量殺戮の現場であるポーランドのアウシュビッツ収容所で、解放されて80年に当たる記念の日・1月27日に強制収容所で犠牲者を悼む追悼式典が行われ、56人の生存者やその家族の他に、イギリスからチャールズ国王、シュルツ・ドイツ首相、マクロン・フランス大統領ら各国の首脳クラスが出席した。ここではナチスによって実に約110万人もの尊い生命が奪われた。99歳のある生存者は、「私たちは人間性をすべて失われた」と屈辱された気持ちを述べた。「反過激主義プロジェクト」最高責任者のウォ-レス元アメリカ国連大使は、「再び、世界で極右や過激思想が台頭しつつある。戦争の記憶をつなぐだけではもう不十分だ。一人一人が何をできるかを考える場にしたい」と積極的に極右運動を排除することを提言した。

 昨日の朝日朝刊に「日曜に想う」と題して編集委員が、アウシュビッツ収容所を見学した時の情景についてコメントしている。収容所所長だったアドルフ・ヘスが絞首刑に処せられた場所からほんの近くに、彼が住んできた住居がある。1月27日にその住宅は一般に公開された。2017年秋私も現地を訪れ、死体を焼いた焼却炉の目の前に処刑台の前に立った。そこから50mも離れていない場所に彼は家族とともに住んでいた。異様な雰囲気だったことを覚えている。家族は死体が焼かれた後に次々と運ばれて行った場面を知って、どう思っただろうか。おぞましい気分に捉われ、とても気を休めて生活出来るような気分にはならなかっただろう。

 しかし、ウォーレス元国連大使が述べたように、懸念されているナチスの思想の根幹にある極右思想が、今や世界で大分復活し、政界にも進出していることを思うと、またぞろ戦争が始まる流れになってきたのではないかと恐ろしい気がしてくる。人間とは時が経てば忘れてしまう危うい性格を有している。近年のウクライナ侵略やパレスチナ・ガザ地区の争乱を見ているととても夢とばかりは考えられない。どうして人間は戦争を始めるのだろう。もう過ちは繰り返しませんと誓っても、その足元から過ちの道へ一歩一歩進む現実は止めようがないようだ。

 もう戦争は見たくもない。それが戦争を知る世代にして、60年安保闘争、ベトナム反戦運動に関わり、戦乱の地を歩いてきた私の個人的な気持ちである。

 折しも旧ソ連が第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを記念して、5月9日にモスクワ市内で開かれる対独戦勝記念式典に、ロシア政府は中国の習近平・国家主席を招待し、習主席は受け入れたという。外国に勝ったという記念に戦勝記念日を祝うのは、戦争に対する他国への自国優位性を世界に啓蒙しているに過ぎない。敗戦を知らない国の動きはよほど気を付けないと危ない。戦争の目はどこにも転がっている。

2025年2月10日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com