近年書物が売れなくなり、その影響により書店の経営も苦しくなり、閉店、廃店する書店が目立っている。これは明らかに本を読む人が減ったことが原因である。特に若者がスマホに熱中して紙の本を読まなくなった。実際電車内の乗客を見てみると以前は新聞か、書物を読む人が多かったが、今では新聞を広げて読んでいる人はめっきり減った。本を読んでいる人も大分減った。その一方で脇目も振らずにスマホに気持ちを集中して、中には読書家がいるかも知れないが、ほとんどゲームで時間を費やしている若者が増えた。この現象は一場面に過ぎないが、どこを見てもじっくり読書を楽しんでいる人の数が減ったことは間違いないようだ。
一般書の販売減少に遅ればせながら付いてきたのが、月刊誌、週刊誌など雑誌類の販売減少である。特に流行などの流れに乗って創刊された週刊誌は、書店ばかりではなく、コンビニ、駅売店などでも販売され市場を広げた。それが、週刊誌ばかりではなく月刊誌なども厳しい現実の風に晒されているようだ。特に驚かされたのは、経済誌として定評のある「週刊ダイヤモンド」が、今までのように書店などでの販売ではなく、4月から直接発行元と読者の間で郵送による契約になることである。同経済誌は、「書店で一番売れるビジネス週刊誌」との評判によって、毎週ではなくとも時折気軽に買い求めることが出来た週刊誌だった。
ここへ来て不況の出版業界にとっていくつか深刻な問題が浮上してきた。ひとつは出版印刷大手2社、大日本印刷とTOPPANにとっても猶予成らざる問題が表れて来た。両社の業績の中で最大のシェアを占める印刷分野の割合が低下したのだ。今後は出版社がデジタル・ファースト方針により、電子版発行に注力する傾向にある。写真週刊誌「フライデー」は、ネット記事を優先し発行回数を減らす見込みで、いずれ週刊誌でありながら隔週発行とするようだ。
また、配送量が減る配送業者にとっても無駄が増えることから、出版社が各雑誌の発行日を同じ日に揃えるようになり、週刊誌は皆同日に発行し、それに月刊誌の発行日も合わせる傾向になる。
全般的に雑誌の発行数が減少し、印刷量も減る印刷大手2社にとっては、雑誌を印刷するオフセット輪転機の数を現在削減している。特に、TOPPANが、旧凸版印刷という名を現在のTOPPANに変えて印刷会社だけではないということをテレビで派手にPRしているくらいである。
他に、書店の店頭販売とは関連はないが、ほとんどの週刊誌を取り扱っているコンビニへ週刊誌を配送している「出版取次」の問題があるようだ。現在取次市場は、トーハンと日販による寡占状態で、現在もコンビニにはこの2社によって配送されている。ところが、日販が今月限りでこの配送を止めることを決め、それをトーハンが引き継ぐことになった。さりとてトーハンがその全量を扱いきれず、その内1/3は切り捨てられると見られている。更に、意外なのは、あの伝統ある月刊誌「文藝春秋」が、週刊誌よりサイズが小さいA5版のため、これを印刷する上記TOPPAN社内の機材が限られ、老朽化も進み、それを更新する意図はなく、長年慣れ親しんだ文藝春秋の誌面が変更される可能性があるということである。
今出版業界の変化に伴い、雑誌文化も衰退しつゝあると見られ、書籍の衰退も相まって日本の文化水準が後退しつゝあるように思える。
我が家の一番年少の孫娘は、現在小学校5年生であるが、幸い読書好きで手当たり次第に本を読んでいる。先日は私が同学年時に読んだ漱石の「坊ちゃん」を買って読むよう勧めたが、読んでくれたかなぁとちょっと気になっている。