このところ外国人観光客の訪日によるインバウンド業の好調について、メディアでよく報じられている。昨日観光庁は、2024年に日本を訪れた外国人の宿泊や買い物などの消費額が、8兆1千4百億円だったと発表した。8兆円を超えたのは、統計開始以来初めてで、コロナ禍の旅行客が冷え込んだ苦難を乗り越えて、訪日客の数も過去最多の3,687万人と推定されている。先月1か月だけで、349万人の観光客が訪れている。日本の豊かな観光資源と旅行客に有利な円安などが寄与して、大勢の外国人が日本を訪れるようになったのである。政府は、30年には6千万人、消費額15兆円の皮算用をはじいているが、精々取らぬ狸の皮算用とならないようしっかり対応して欲しい。
ただ、以前から懸念されているのは、観光客が繁忙期に大都市の観光地に大勢訪れて、施設面や交通面で充分対応し切れず、世界的な観光地で問題となっているオーバーツーリズム現象である。それに対応できるよう受け入れ態勢を整備する必要がある。現状は、大都市圏に偏る宿泊先の分散や、混雑や騒音など人気観光地のオーバーツーリズム特有の対策は、急がなければならない。例えば、京都市内などでは、市内路線バスを大勢の外国人観光客が利用して、一般市民が利用出来ない現象も見られるようだ。また、財政的にはインバウンド業界で国の財政は潤うが、アウトバウンドともどもともに成長することが大事だと思う。その点では、以前は圧倒的にアウトバウンドが多かったが、24年はアウトバウンド業の海外旅行へ出かける日本人観光客が、19年に比較して2/3程度ほどに減少している。国は、インバウンド業の発展ばかりではなく、出費はあるが、アウトとインと合わせて発展するアウトバウンド業の発展のためにも、前向きの対策を考えるべきであろう。
今や観光業は日本経済を支える大きな柱に成長しつつあり、実際23年の貿易統計によると他産業の輸出額と比較しても観光業の8兆円は、自動車の17兆2千億円に次ぐ規模にまで膨らみ、半導体等電子部品の5兆4千億円、鉄鋼の4兆5千億円をしのぎ、全産業の中でも2番目に国家の財政に貢献しているのだ。
かつてのお役人の言っていたことなので今となっては馬鹿げていると思うしかないが、以前まだインバウンド業が独り立ちしていない当時は、アウトバウンドの海外旅行は金食い虫で海外旅行者が貿易などで蓄積した貴重な外貨を外国で消費し日本の財政を圧迫し、道楽息子のようなものだと散々皮肉たっぷりにこき下ろしていた。我々旅行業者は使用する外貨の申請などでもこそこそと行ったものである。それが、インバウンド業成長に伴い、観光業全体が成長し、国の歳入に貢献すると分かるや日本経済のひとつの柱だと我が物顔をして話しているのを見ると、かつてアウトバウンドでも、インバウンドでも苦労した身にとっては、何を今更調子の好いことを言うかと昔の反骨心が蘇ってくる。
それでもとにかく日本の観光業が成長しつつあることは喜ばしい現象である。