アメリカの国際政治学者イアン・ブレマー氏が率いる調査会社「ユーラシア・グループ」が、一昨日今年の世界10大リスクを発表した。挙げられた10項目の中で、1位にランクされたのが、「深まるGゼロ世界の混迷」で対立、分裂、差別などが懸念されているように、今日国際秩序を維持する国が存在しない状態で地政学的な不安定が常態化するとして、第3次大戦が起きるリスクがかってないほど高まっていると懸念している。そして、その張本人であるトランプ次期大統領が、支配する政治が2番目にリストアップされ、更にトランプ氏が行うであろう「トランプノミクス」が第3位にアップされている。更に言えば、9位の「統治なき領域の拡大」、10位「アメリカとメキシコの対立」は、これも最近のトランプ氏のカナダのアメリカ51番目の州発言や、メキシコに対する関税措置、不法移民の取り締まりに関する発言が原因である。こうしてみると世界は、今年はトランプ次期大統領に引っ掻き回されることになる。それでもどう思っているのか、この世界の世論からアメリカ国民の本音があまり聞こえてこない。
昨日カナダのトリュドー首相が辞任すると公表したが、これも前記のようにトランプ氏がカナダはアメリカの51番目の州になった方が良いとカナダ国民の政治の不安定を皮肉っぽく述べたりしたことがひとつの原因として考えられている。そこへ先日グリーンランドの領有を求めるような傲慢な発言をして、領有するデンマークを怒らせたが、トランプ氏は一向に自説を取り下げることなく、反ってグリーンランドの周辺で中国やロシアが活動を活発化させ、アメリカの国家保安上揺るがせに出来ないと身勝手な発言をしている。更にデンマークは持っている法的な権利を世界の安全保障のため放棄すべきで、さもなくばアメリカはデンマークに対して輸入製品に関税を課すと脅迫的な発言までしている。
さて、相変わらず曙光が見えないウクライナ戦線で、一進一退を繰り広げているロシア軍が、年々死傷者数が増加して、昨年2024年だけでも42万9千人となり、22年の侵略開始以来、実に79万人の死傷者を出したとイギリス国防省が公表した。これ故に、北朝鮮から傭兵を受け入れるのも止むを得ないと考えているのだろう。それでも停戦の兆しは一向に見えず、このまま貴重な生命が失われていくだろう。
停戦については、トランプ氏はこれまで「大統領就任前」とか、「就任後24時間以内」などと大ボラを吹いていたが、2週間後に大統領就任が近づいた昨日の記者会見では、「停戦まで6カ月あれば好い」などとトーンダウンしている。
とにかく今年1年と言わず、向う4年間の任期中は世界がトランプ大統領に振り回されることだろう。それにしても毎度思うことは、どうしてこのような世界中から顰蹙を買うような人物をアメリカ国民は、自国を代表する第一人者の座へ祭り上げるのだろう。アメリカ人の民度の低さを表している証拠ではないだろうか。
この世界的暴れん坊将軍の行状から察すると、石破首相も相当用心してかからないと対トランプ外交に苦戦するのではないかと思う。