昨日日本の同盟国でえっ!と驚くような決定が2つも行われた。
そのひとつは、バイデン米大統領がアメリカの国家安全保障を損なう恐れがあるとして、日本製鉄によるアメリカの鉄鋼最大手メーカー・USスチール(USS)の買収を認めないとその計画を禁止する命令を出したことである。大統領が民間企業の商取引に禁止を命じるなんてことは初めてである。一昨年12月に両社の間で買収計画が決まり、合意していた。しかし、買収計画が公表されるや、アメリカの鉄鋼業界の労働組合、全米鉄鋼労働組合(USW)が、猛烈に反対し強く抗議した。
結局残り任期が2週間に迫ったバイデン大統領が、自身の思惑でUSW組合員、及びアメリカ国民の信頼を失いたくないとの自己擁護のために資本主義の大義を捨てて無難に退任する道を選んだとしか思えない。日鉄、USSともに失望感を抱えているが、この買収禁止によりアメリカの鉄鋼業界をはじめとして、他の分野も含めた産業界に対する海外からの投資が、今後他の地域へ移っていくことが懸念される。アメリカ経済界にとっては厳しい事態が予想されることも考えられる。
アメリカのメディアもバイデン大統領の決定について批判的なコメントを掲載している。ニューヨーク・タイムズは、「アメリカで培われた開かれた投資という文化からの逸脱」と指摘し、ウォール・ストリート・ジャーナルは、この決定はUSWにとっては勝利だとしながらも、124年の歴史があるUSSの将来に暗い影を落とす、と厳しく批判している。実際USSは2024年10月~12月決算で、最終赤字に陥ると見られ、日鉄の買収や追加の投資がなければ、今後の成長戦略が描けないと指摘されている。その一方で、日本製鉄は大統領による禁止命令は適正な手続きや法令に違反していると主張して、アメリカ政府を相手取って訴えを起こす方針を決めたと伝えられた。一方のUSSのCEOはバイデン大統領の行動は恥ずべきものだと批判的な声明を発表した。同盟国である日本との関係が悪化する可能性もある。
日本政府もこの決定については、武藤容治・経産相が早速不満を表明し、今後バイデン政権に対して説明と不安払拭に向けた対応を求めていくと述べた。今後この結末はどういう落としどころを探すのだろうか。
もうひとつの猶予ならぬ事件とは、お隣の韓国でのことである。この1か月間連日のように尹錫悦大統領による非常戒厳令発令とその撤回、そしてその後の大統領の弾劾訴追を巡る動きの挙句に、合同捜査本部が大統領拘束の令状を発行し、昨日その執行を試みた。ところが、大統領公邸の敷地に入った捜査官らは、大統領警護庁が大統領の警護を理由に公邸の捜索を許可せず、警護庁の関係者らによって阻まれた結果、合同捜査本部は令状の執行を中止した。国家の最高権力者の周辺がこのような治安状態で、政治が機能する筈がない。この様子では、韓国政界は世界に置いて行かれるだろう。この政治的混乱の解決の道は、まだ不透明である。一刻も早く事態を解決させるよう国が一体となるべき時である。
このように日本の同盟国では、わが国に直接、或いは間接に影響を与える事態に晒されている。今年の政治的安定を祈るしかないか。