今日はノーベル平和賞授賞式が、ノルウェイの首都オスロ市内で行われた。かつて佐藤栄作首相が平和賞を受賞した時は、そのニュースを聞いてとても信じられなかった。国民の間にも意外感とまさかとの驚きがあった。何故だろうか? どうして積極的に平和活動に貢献しているようには思えなかった、佐藤首相に権威あるノーベル平和賞が授与されるのだろうかと多くの疑問があった。それに引き換え、今回日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授賞が決定した時は、日本中が感動し、その受賞に喜びを感じたものである。今回の授賞式には、今日代表として登壇する3人以外に、高校生を含め多くの人びとが同行している。それは受賞の対象になった核廃絶運動を長い間に亘って続けて来たその努力してきたその背後に大勢の人たちの支えがあったからである。そして賞を代表として受け取る3人が、投下後すでに79年も経過して、後期高齢者になり、健康上の心配もあったからでもある。そのため渡航費と現地滞在費などを含めて約1千万円というかなりの費用が掛かり、とても不足だということから、早速有志らの発想でクラウドファンディング(寄付金公募)を行い、あっという間に約4千万円の支援金を集めたというから、クラウドファンディングの中でも極めて異質なくらい多額の資金が集まった。それほど今年の平和賞受賞には、多くの人びとの支援の下に誠実な核兵器廃絶、平和への祈りと願いが込められていたからだと思う。
ノーベル賞委員会のフリートネス委員長は、日本被団協の平和賞受賞について「我々にとって重要だったのは、日本被団協の素晴らしい活動を強調し、同時に核兵器が依然として問題で、人類への高まる脅威であることを世界に警告することだった」と語った。
一方で92歳の田中煕巳代表は、出発前から「核兵器は人類と共存させてはならない」としきりに強調していたが、現地入りしてからも現地記者団に「日本被団協は、核兵器廃絶、核のタブー確立のために貢献してきたと自負していた。運動の成果が世界の人びとに広く認められたのである。ロシアがウクライナ侵攻などで核兵器が威嚇に使われているが、核が軽く語られるようになったのは遺憾だ」と指摘し、核戦争誘発への警告を行った。この日本被団協の受賞を機に、核廃絶を巡る国際的な議論が進展することに期待した。
問題は、この平和賞受賞をきっかけに核廃絶運動が期待通り世界で進展するかどうかである。それは日本政府の姿勢にもかかっている。受賞式を前に、林芳正官房長官が今日の記者会見で、「長年核兵器の廃絶や被爆の実相に対する理解促進に取り組んでこられた」と日本被団協を評価したうえで、政府としても「核兵器のない世界に向けた現実的で実践的な取り組みを維持、強化していく」と訴え、被爆者とも連携していく考えを示した。
しかし、日本政府はこれまで核兵器禁止条約には参加していない。非核3原則だって怪しいものである。核保有国・アメリカの「核の傘」の下に同盟国である日本が守られているとの淡い希望の中で、アメリカに遠慮して強い核廃絶運動を行おうとしない日本政府の姿勢に疑念がある。核廃絶は、まだスタートしたばかりだと考えている。