イスラエルとレバノン両国政府間で話し合われていた、イスラエル軍とイスラム教シーア派組織ヒズボラの停戦について、漸く合意に達した。とにかくこの両国の内情が複雑で、イスラエルはともかく、一方のレバノンは、レバノン政府が立場上交渉しているが、戦っているのはヒズボラ組織であり、この後政府が国内でヒズボラを抑えきれるだろうか、不安が残る。向う2カ月間の停戦ということで、今後侵略行為や、合意違反がなければ、停戦は延長される。それにしても昨年10月にパレスチナ・ガザ地区攻撃と同時に、イスラエルに対してヒズボラの攻撃が開始されたが、この間レバノン国内だけで3千8百人以上が死亡した。仲介役を務めたアメリカのバイデン大統領は、ヒズボラが合意を破った場合イスラエルは国際法上自衛の権利があると語ったように、相も変わらずイスラエル寄りの発言をしている。果たして、この停戦合意が終戦へ進むのか、まだ半信半疑である。
ただ、この停戦合意はイスラエルにとっては、もっけの幸いである。今後ガザ地区への攻撃に集中することが出来、ハマスを孤立させた上で壊滅させて勝利へ進むことが出来る可能性があるからである。
この数日間にレバノンの首都ベイルートの市街をテレビ映像で観ることが出来たが、私がひとりで第3次中東戦争直後の1967年末に訪れた当時とは、随分街の様子が変貌していて悲しい気持ちに捉われた。当時は戦後半年で戦争の残り火が中東諸国のあちらこちらに感じられたものだったが、それでも市内は落ち着いて宿泊した海辺のホテルの窓から見下ろすと「中東のパリ」の評判通り、海水浴や日光浴を楽しむ平和な多くの人びとの姿が見られたものである。それが今や殺伐とした空気が感じられる。これも寂しいことである。
さて、今日臨時国会が開会され、明日石破首相は所信表明演説を行うようだが、まだまだ石破首相の政権担当後の行動、実績はお手並み拝見程度で、今は難題を避けて通っているような印象を受ける。議席数を大幅に減らした原因の「裏金問題」が、その後も尾を引いている。政治資金規正法改正に向けて、野党から政策活動費の廃止を要求されているが、廃止を受け入れながら、形を変えて生き残りを図るなど相変わらず、「裏金問題」の反省が見られない。他にも調査研究広報滞在費(旧文通費)の見直しに向け与野党が協議会を開いたが、あの手この手で各党の本音が現れるようだ。
その中で、目についたのが、立憲民主党と日本維新の会が唱える国会議員の「世襲制限」である。これは何とかやってもらいたいというのが、国民の総意であると思う。圧倒的に世襲議員の多い自民党としては、すんなり受け入れるとは思えないが、それでも石破首相は最近トーンダウンしたようだが、首相就任前に出版した自著の中に「世襲政治にも手を付けるべき」と触れている。かなり以前のことではっきりした年月は記憶にないが、自民党内にも世襲制限の動きはあった。世襲の問題となっている親の「地盤、看板、カバン」を受け継ぎ、選挙に圧倒的に有利とされている点にブレーキをかけようとしたことである。今回立憲や維新が主張する「引退する国会議員の政治団体による、配偶者と3親等以内の親族の寄付や、代表継承禁止」は、憲法による「職業選択の自由」により、立候補の禁止は困難とされている。だが、かつて自民党が考えた提案では、一定期間、例えば4年なり6年は、被継承者である親の地盤(選挙区)からの出馬を制限し、期間経過後に認めるという案があったように覚えている。その辺りを調整すれば、憲法違反を冒さずとも優位な世襲制度の形を変えて実施できるのではないかと考えられる。
立憲、維新ばかりでなく、他の野党にとっても優位となるので、この「世襲制限」へ向け一歩進んで欲しいものである。もちろんこれには、メディアの側面的な支援が欠かせない。