10月1日に石破内閣がスタートして早くも2か月近くが経過したが、与党が過半数を確保出来ず、また石破政権自体も自民党内で盤石な体制ではないため、何かと外野からは厳しいコメントが浴びせられている。それでも国民民主党から選挙公約である「所得倍増計画の実現」のために強引にも「103万円の壁」の引き上げを迫られ、与党と国民民主党の間で何とか合意し、実現へ向けてスタートした。
しかし、この「103万円の壁」問題は意外にも分かり易いようでいて案外理解し難い。そこへ国税と地方税の税負担の難問が入り込んできたために、全体像としては複雑化して一層理解しにくくなってしまった。これにはもちろん伝えるメディアの責任もある。更に、今検討が始められた問題として、働く高齢者の「在職老齢年金」が持ち上がってきた。これは、65歳以上で働く場合、賃金と基礎年金を除く厚生年金の合計が、50万円を超えると厚生年金が減額、または全額カットされる仕組みになっている。年々物価に倣い賃金・収入が増額される中で、この50万円を2つの案、62万円か71万円に引き上げるという提案が検討されている。当事者でないと詳しくは理解し兼ねるが、それでも石破政権はこれらの難しい問題に前向きに取り組もうとしている姿勢は、一応評価してやりたい。
これらの分かり難い石破産物に比較して、分かり易いが、聊か問題だと首を傾げるようなことが小中校教育現場で今年度から実施されている。これは石破政権の産物ではないが、義務教育中の小中学校の教育の場で、今年4月からタブレットなどの電子端末が1人1台与えられる「デジタル教科書」を本格的に導入したことである。全国のほぼすべての自治体で端末の配布が完了している。幼い子どもの教育は、ハード器材よりソフトによる教師と子どもとの触れ合いがベースにあるべきだと思っているので、このような大金を投じてハードの端末を供与し、剰え子どもの視力を弱めるような器材を使用した教育は、真の意味で義務教育には不向きだと思う。
実際、2006年から1人1台の端末器材を与える教育を実施してきたスウェーデンでは、児童の学力低下により教科書は紙に復活したという。教育大臣の「基本的な読み書きに最適なのはアナログツールだ。ペンと紙を使い、学校図書館を利用出来る環境が重要」と語り、今年7月から端末器材を止めて紙の教科書導入を法律で義務付けした。理のある措置だと思う。スウェーデン政府が義務教育の本質を理解して現行制度は子どもたちにとって必ずしも良いとは思えないと、方針を変更したことは賢明だと思う。この点で日本の義務教育は、間違っているのではないかと思う。日本の教育専門家は、現行のタブレット教科書採用には反対の声が強かったようだが、これを霞が関の文部行政が押し切って実現したそうだ。タブレット製造会社との間に、「裏金」でもあったのではないかと考えてしまう。
まだ今年度スタートしたばかりで、それなりに予算を投入した新しい教育システムだが、冷静に見直し、非は非と認めて原点に返るべきではないか。私自身が受けた義務教育を振り返ってみても、先生と対話しつつ、怒られ教えられながら校外活動もエンジョイした素朴なソフト教育が今も忘れられない。
石破首相には、ぜひとも子どもの基礎教育である真の義務教育の充実に手を差し伸べてもらいたいと考えている。