1980年12月に文部省教員海外派遣茨城県視察団でご一緒した女性教師お2人を、東京駅ステーションホテルのロビーで久しぶりに待っていた時、外を見ると大勢の人びとが集まり、警備の人たちもいたので、興味本位に外へ出て警備の方に何かあるのか尋ねてみた。外国の駐日大使が皇居で信任状を提出し、皇居から馬車で帰ってくるところだという。するとしばらくして馬の蹄が聞こえ、4人の騎馬兵の後を馬車が2台従い、大使らしき女性が東京駅玄関前で降りられ、馬車は引き返して行った。アフリカ・ガーナの北のブルキナファソという国の大使だった。私はもちろん、周囲にいた外国人を含めて多くの見物人も珍しいシーンを見たと感じたのではないだろうか。
まもなく2人の先生がやって来られ、高級感のある軽食をいただき、44年前のヨーロッパの学校訪問を想い出しながら、諸々の話で楽しいひとときを過ごすことが出来た。22人から成る視察団では、マルセイユとローマで現地の小中学校など教育施設を見学したが、それ以上に印象に残ったのは、マルセイユ滞在中の12月8日にビートルズのジョン・レノンが号外により暗殺されたことを知ったことだった。もう44年前のことでもあり、視察団員の多くは亡くなられ、毎年のように続けられた同窓会も、29回を以って幕引きとなった。思い出がいっぱい詰まった視察団だっただけに、やはり寂しい気がしている。
さて、今日朝のニュースで昨日投開票が行われた因縁の兵庫県知事選は、驚いたことに全県議員から不信任案を突き付けられ、失職した斎藤元彦前知事が予想を覆して再選されたことを知った。予想も出来なかった異常事態に疑問を感じた。前回の知事選より投票率が14.55%向上したとは言え、斎藤知事の得票が前回より25万票以上も上積みされたとは一体どういうことだろうか。テレビや新聞のメディア情報によれば、知事のパワハラによって1人の局長が自死した他に、多くのパワハラを証言する県職員もいて、議会から総スカンを食った知事が再び、県知事に選任されるとはとても常識では考えられない。
県議会ではこれまで知事の資質に問題があるとして、知事への批判を繰り返していただけに、すべての会派は今後の対応に苦慮することと思う。この結果については、斎藤知事の戦略が功を奏したように伝えられている。新聞やテレビで伝えられた知事に関する報道は、すべてが真実とは受け取られたようには思えず、知事がSNSで積極的に反省と自らの実績や今後の県政の進め方を訴えたことが、SNSに頼る若者にアピールしたようだ。実際10代、20代、30代の若者は、斎藤知事に投票した人が多い。しかし、斎藤知事に絡んだ疑念がまだ十分に解消されておらず、もし新たな事実が明らかになれば、再び県議会や県民からの批判が高まり、斎藤知事の県政運営に影響が出るだろう。
それにしても兵庫県民は斎藤知事を改めて承認したことに何らの疑問を感じることはないのだろうか。文部省の兵庫県教員海外視察団で県の先生方と1度お供したことがあるが、今度同窓会に参加する機会があったら、団員の先生方に本音をお尋ねしたいものである。