6365.2024年10月16日(水) ノーベル平和賞受賞に身勝手な言い分

 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)にノーベル平和賞が授賞されることが公表されてから、各地で祝意が示されている。日本国内ではもとより、広島、長崎へ世界で初めて唯一の原爆投下を行ったアメリカからも祝辞が寄せられた。アメリカは原爆を投下したという後ろめたい気持ちがあるせいか、被爆者へ思いやりの気持ちを示すことがなかったが、3日後になって漸くバイデン大統領が、これまでの歴史的な活動が評価されたと日本被団協に祝意を示した。一方で、コーヘン・イスラエル駐日大使が、現在パレスチナ・ガザ地区をはじめレバノンへの空爆などの継続的な戦闘に核使用が懸念されていることに神経質になったのか、日本被団協の箕牧代表委員が「ガザでは子どもが血をいっぱい出して抱かれている。原爆投下後の80年前の日本と重なる」との言葉を捉えて、「ガザと80年前の日本との比較は不適切、かつ根拠に欠ける」と反論した。どうして他国の罪のない人々が痛めつけられた痛みを思いやる気持ちと同情心がないのか、これでよくぞ被爆国の大使が務まるものだと呆れるほどである。イスラエル大使の発言はあまりにも国際感覚と思いやりに欠ける。

 その点では、同日オバマ元米大統領は、日本被団協に対して「個人的な悲劇から力強い運動を築き上げた」と祝意を示し日本被団協のこれまでの活動を評価した。オバマ氏は、大統領在任中の2009年に「核なき世界」の実現を世界に提唱して、ノーベル平和賞を受賞し、アメリカの大統領としても初めて被爆地広島を訪問した。アメリカ国内には、今以て原爆投下は終戦を早め、犠牲者の数を減らしたと結果的に大惨事をもたらしたことには目をつぶり評価する声が多い。被爆者に対する思いやりに欠ける気持ちが根強く残っている。そこには懺悔の気持ちはまったく感じられない。それは、原爆投下のみならず、1954年ビキニ環礁で水爆実験を実施し、近海を航行中アメリカが設定した危険水域の外で操業していたマグロ漁船「第五福竜丸」が多量の放射性降下物(死の灰)を浴び、23名の乗組員全員が亡くなった放射能被爆事件にも表れた。
 この残酷な加害について、アメリカ政府は、生き残り半年後に亡くなった無線長久保山愛吉氏をはじめ、すべての犠牲者に対して被爆を矮小化して、放射能が直接の原因ではないとして今日まで一切詫びることがないことからも分かる。

 一方、アメリカ政府とは異なるが、同じように日本への原爆投下についてあまり同情を示すことがない中国は、日本被団協のノーベル賞受賞について「関連報道に留意している」とだけ述べ、直接触れずに話題を逸らし「中国は一貫して核兵器を全面的に禁止し、廃棄したうえで核がない世界を構築することが全人類の共同の利益に合致する」と日本被団協へのコメントではなく、自国の政策を強調した。報道管制の厳しいことから、中国メディアもこの祝うべきノーベル賞受賞についてはほとんど報道していない。中国は核兵器を増やし、核弾道を配備し、施設を整備しつつある現状から、とても核抑止、禁止について前向きとは思えないが、その点を突かれるのを警戒しているだけであるとしか思えない。

 現実に世界で核兵器を保有している国は、今年初めの時点で1位のロシアと2位のアメリカだけで、全核装備品の8割以上であり、他には中国、フランス、イギリス、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9か国もある。保有国のイスラエル大使が、日本被団協のノーベル賞受賞にイチャモンをつけるようでは、日本に駐在する外国人大使としては不適格だと言わざるを得ない。日本国民に対して失礼千万である。

2024年10月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com