ウクライナ戦争より最近のイスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への攻撃が激しくなっている。今開会中の国連総会でイスラエルのネタニヤフ首相がハマスを壊滅するまで攻め続けるとの強気な演説は、国連グテーレス事務総長をはじめ多くの国々から非難されるほどのもので、ネタニヤフ首相のスピーチ開始直前には会場から立ち去る多くの各国代表の姿が目立った。ガザ地区への空襲により哀れにも避難民、特に幼い子どもたちがその犠牲になった。それと同時に、レバノンの首都ベイルートに本拠を置くイスラム系シーア派組織ヒズボラへの攻撃も急激に激しさを加えている。昨日のヒズボラ本部のビルをターゲットにした空爆により、ヒズボラの最高指導者ナスララ師が殺害された。イランの最高指導者ハメネイ師は、ナスララ師の死を悼み5日間の服喪を指示し、同時に報復を誓った。国連総会から急ぎ帰国していたネタニヤフ首相は、歴史的な転換点であり、無数のイスラエル人の死に責任を持つ者たちへの借りを返したと述べた。このままだと、イスラエルとアラブの戦争は益々先鋭化して終わりが見えなくなる恐れがある。
この残虐なイスラエル軍によるナスララ師殺害について、驚いたことにアメリカのバイデン大統領は、「ナスララと当人が率いたテロ組織ヒズボラは、40年に亘り恐怖で支配する間何百人ものアメリカ人を殺害した。アメリカ人、イスラエル人、レバノン民間人の数千人を含む大勢がその被害者となっていただけに、イスラエルによる空爆で彼が死亡したことは、一定の正義が実現したことを意味する」と些か的外れのイスラエルを擁護する考えを述べた。
アメリカはいろいろこじつけるのが好きだが、結局のところイスラエルの強力な支援国であり、強気のイスラエルを支えている。バイデン大統領も任期が残り少なくなり、高齢のせいもあってか世界の公平な目から見てアメリカ第一主義が強過ぎ、支離滅裂な言動もが目立つようになった。アメリカとイスラエルが、世界を相手に戦っているような印象を与えている。ナチスによるアウシュビッツのホロコーストのせいもあり、ナチスから迫害されたと世界中から同情を買っていたユダヤ人、イスラエル人も、現在のイスラエルの非人道的な攻撃で、その同情をも失いかけている。そのとばっちりが、思いがけず「命のビザ」で東洋のシンドラーと言われている杉原千畝にも飛び移っているとの噂がある。実は、昨晩もNHKで「祖父はユダヤ人を救った」と題するドキュメントが放映された。杉原の行為をPRするNPOを主宰するお孫さんが父の元職場やアウシュビッツを旅しながら、困った人々をどうやって助けるかということを考えさせる企画だった。お孫さんは、「祖父はユダヤ人を助けたということではなく、そこに困っている人がいたから助けた」と祖父と同じように考えている。やはり、最近のイスラエルの残虐な殺戮行為に対する反感から、前記NPOにも疑問や不安の声が寄せられているようだ。早とちりが、「残虐なユダヤ人を救った男」との見当はずれの話へ発展させているような節もある。「昨日は善人、されど今日は悪人」と世の流れに従って、人の考えも簡単に変わってしまうものかと嘆かわしく感じる。「善は善、悪は悪」である。
しばらくは、イスラエルによる反イスラエル派への攻撃と、その反撃から目が離せない状況となるだろう。
さて、一昨日の自民党新総裁に石破茂元幹事長が決定したことについて、テレビで政治ジャーナリストらの声を聞いて納得できる解説があった。1回目の投票で国会議員票は、1位の高市が72票、2位の石破が46票でかなり差がつき、それが全体の票にも響いていたが、決戦投票では国会議員票は、高市が173票と2位に下がったのに対して、石破が189票を獲得して逆転して1位になった。それは党内の支持では、高市有利とされていたが、1回目から決戦に至る過程で石破の国会議員票が143票増えたのに対して、高市票は101票しか増えなかった。結局この差が、高市が石破に勝てなかった結果になった。
では、なぜ決選投票で石破に国会議員票が多く集まったかと言えば、高市が「総理になったら靖国神社参拝は欠かさない」とあまりにも刺激的に語った。間もなく解散・衆院総選挙が行われる前に、この発言は穏当でなく選挙民の受けが良くなく、日中間や対米外交においても難しい問題を引き起こす可能性が強いと自民党員が警戒自重して、高市より無難な石破に投票したためであるとジャーナリストはコメントしていた。高市のように、常に極右派の顔を見せ、戦争の悲惨さを気にも留めない国のリーダーでは実際困る。
結果として、石破氏が自民党総裁になったのは、正解だったと言えよう。