自民党総裁選(12日告示・27日投開票)が迫っているが、出馬予定者12人の内出馬を宣言したのは、小林鷹之、石破茂、河野太郎3氏だけだったが、今日4人目の林芳正・官房長官が出馬表明した。それぞれ20人の推薦人を集めるのに苦労されているようだが、派閥、旧派閥との話し合いや、他の出馬予定者の戦略を計算しながら、折を見て出馬宣言するつもりだろう。噂では現状小泉進次郎・元環境相が優位な立場にいるようで、6日にも出馬を表明すると見られている。それでもその小泉氏に対しては、案外党内外に批判的な意見が多いようだ。特に政治評論家の間では、小泉氏は空虚な実像の首相候補と言われており、何事にも定見がないと言われている。確かに、父小泉純一郎元首相の人気を引き継いだ世襲政治家であり国内外に名は売れているが、自身の口から国内向けに日本のあるべき姿について思想的、哲学的にぶれない政治家としてのビジョンや、国際社会に向けて日本の立場を語ったのを耳にしたことがない。それは必ずしも小泉氏だけの問題ではないとは思うが、仮にも日本の首相になる人物を選ぶことになるので、この機会に臆せず本音を語ってもらいたい。
総裁選の各候補者は、首相として日本の政治、外交問題などをどう考えているのか自民党内の内輪の選挙というだけではなく、一堂に会して討論会を行い、国民が日本のビジョンと歩むべき道を知る機会を作るべきである。さすれば、総裁選の意味、本質も分かり易く国民が政治について関心を抱くだろう。特に聞きたいのは、彼らが改憲論議にばかり先走っているが、憲法について自分はどう考えているのかということは、国民にとって一番知りたいことである。
折も折、昨日岸田首相は、自民党の憲法改正実現本部が取りまとめた憲法へ自衛隊の明記などの論点整理を、新総裁に引き継いでもらいたいと要望した。現在憲法改正実現本部が取りまとめた論点は、現憲法9条の条文はそのままにしつゝ、新たに自衛隊の存在を明記するというものである。憲法改正をアピールすることは、国民の間にかなりの抵抗があると考え、中々至難であると考慮の末に、現存する自衛隊の存在を憲法に明記することによって自分らの考えを押し通そうとの意向である。そこには、石破元幹事長の「自衛隊は違憲だという意見を完全に払拭するために意義がある」という考えがあり、自衛隊を軍隊と名称変更するかどうかは不明だが、戦争放棄と軍隊を認めることに些かも矛盾を感じていないようだ。石破氏が特に拘っているのは、憲法第9条2項の削除であり、1項で「武力の威嚇、及び行使は永久に放棄する」と謳った文言をそのまま残しながら、「陸海空軍その他の戦力は、保持せず、国の交戦権は認めない」の2項を削除しようというのである。第1項の説得力は当然弱くなる。
ともかく現状では自民党総裁=首相=自衛隊の最高指揮監督者、という点からも、この際憲法第9条について総裁選立候補者は持論を披瀝するべきである。