昨日ドイツの2つの州で州議会選挙が行われ、そのひとつであるチューリンゲン州では、戦後初めて右派の「ドイツのための選択肢」が1位となった。ショルツ首相の社会民主党など与党3党は一敗地に塗れ、相当なショックを受けている。ナチスが第1次世界大戦中に冒した残虐で非人道的な行為の反省から、寛容とか、多様性を重視してきた戦後ドイツでは考えられないことである。況して同州は東西に分断されていた民主化以前は東ドイツ領にあって、ナチスを徹底的に非難していただけに、あまりの落差にかつての東ドイツを知る人にとっては驚天動地の驚きと言ってもいい。
私自身1983年に旧文部省海外教育視察団にお供して旧東独のカール・マルクス・シュタット(現ケムニッツ)を訪問した時、行動の際は終始シュタージという秘密警察に監視され、落ち着いた気持ちになれなかったことを想い出す。高校で見学した授業では右翼とは反対の社会主義的な科目が多かった。とても右翼的雰囲気は感じられなかった。東西対立崩壊後でも、ドイツ政府は寛容な政策を取っていた。それが近年アフリカ諸国などから多くの難民がヨーロッパに押し寄せて来て、欧米諸国政府は彼らの入国を不法入国として厳しい政策を取るようになった。それでもドイツ政府は難民や移民を受け入れていた。近年労働市場が厳しくなったせいもあり、徐々に移民の入国を規制すべきとの声が強まってきた。そんな最中に移民を排除すると叫んでいた右派「ドイツのための選択肢」が1位となった。
同じく昨日選挙を行ったザクセン州の結果は、まだ分かっていないが、ここでもかなり右翼勢力が伸びていると伝えられている。そして、22日にはブランデンブルグ州でも州議会選が行われる。まだドイツのほんの一部にしか過ぎないが、戦時中のナチスの行動を反省した筈のドイツに、ナチス的動きが復活することに只ならぬものを感じる。
それにはロシアのウクライナ侵攻がそのきっかけになったようだ。プーチン大統領の遠謀によりヨーロッパに昔のハプスブルグ家の影らしきものの復活を仕掛けている。最近のハンガリーのオルバン首相の行動が民族主義をベースに、欧州議会で新会派「ヨーロッパの愛国者」なる組織を立ち上げた。これにオーストリアの極右政党「自由党」キッケル党首とチェコのバビッシュ前首相が顔を揃えた。一部には、「ハプスブルグ家の再来」とも見られている。この他にフランスのルペン国民連合党首をはじめ、イタリアやオランダの極右勢力が合流し、ヨーロッパの右翼勢力が結束しそうな雲行きである。
世界には、今や民主主義的、社会主義的な空気よりも右翼、極右的、帝国主義的な行動への回帰が表れているような気がする。日本でも政治や社会の動きに無関心でいたら、世間には保守的な空気が流れ、それがやがて右翼的なものとなり、気が付いたら昔の大日本帝国の軍国主義に戻る可能性だってあり得る。一説に依るとプーチンは、親ロのオルバン首相を操り、戦後国土を失った国々に再び旧国土を自国領にするとの甘言でルーマニアや、スロバキア、セルビアに帝国主義的領土侵略の行動を煽っているとの声が聞こえてくる。ロシアが帝国主義の亡霊を呼び覚ます中で、中央及び東ヨーロッパは、ヨーロッパの火薬庫となりつつある。
プーチンの匙加減でヨーロッパは危険な帝国主義的体制にのめり込む恐れが表れている。明らかにロシアは共産主義国家でなく、社会主義国家でもなく、帝国主義的国家である体質を表しつつある。
ところで日本はどうだろうか。裏金に目がなく、利己主義的で戦争好きな国会議員たちの間では、右翼化の傾向が表れ始めているのではないだろうか。