6316.2024年8月28日(水) 出版社に書店、読者も減る「2025年問題」

 運送業界では深刻な運転手不足という「2024年問題」を抱えているが、出版業界にも「2025年問題」という猶予ならぬ難題が起きている。出版業界が不況に苦しんでいるのは今に始まったことではないが、出版物卸売市場の8割を寡占状態にしている出版取次会社の大手2社、日販とトーハンとて例外ではない。その日販がコンビニのファミリーマートとローソンへの雑誌配送を来年2月で停止するという。当初日販の扱い分をもう一方の取次会社であるトーハンが引き継ぐ方針だったが、どういうわけか、引き継ぎ予定の店の7割にしか配送しないことになり、計算上ファミリーマートとローソン店への配送は約9千店ほど減ることになった。週刊誌は売上の半分をコンビニが占めていると言われ、今後週刊誌自体の売り上げが大きく減ることが懸念されている。噂では、講談社の写真週刊誌「フライデー」は、今秋以降週1回の発行を止めて、2週間に1度の隔週発行に切り替えるという。

 そもそも出版業界の不況の根源は、本を読む読者層が年々減少していることにある。書籍の販売数が減って書店の経営が苦しくなり、徐々に書店が閉鎖される状況に追い込まれた。実際閉鎖に追い込まれたいくつかの書店や、親しかった出版社も知っている。

 その根本的原因は、これまでも本ブログで何度か取り上げたが、初等教育にあると考えている。幼い小学生の頃に文章を綴る機会に恵まれていたのに今やそれが大幅に減ったことと、最も吸収力、修得力のある高校生時代に受験勉強に明け暮れて、文学、特に大河小説を読まなかったことなどが、後年文章力が向上しないことと、読書する習慣が身に付かなくなった結果に大分影響をもたらしている。

 文章を書く機会が少なくなったことについては、上記のように戦後間もなく教育を受けた少学生時代に、国語は授業では「読み方」と「綴り方」の2種類に分けられ、読むことと書くことを並行して教えられたことである。それが今では「綴り方」がなくなってしまったのである。幼いころより比較的文章を綴ることが好きで文章を書かないと落ち着かない気持ちになったのも、その原因を辿って行けば小学生時代の国語「読み方」と「綴り方」の学習のお陰であると信じている。

 最近の若者が、スマホに熱中して本を読まなくなったという声はしばしば耳にする。書店が経営不振に至った大きな原因として考えられるのは、書店にとってかつて良き顧客層だった若者らが書店に立ち寄らなくなったことが大きい。

 以前に、機会があり元文部事務次官とお話した時、小学校の国語教育で終戦直後のように国語授業に「読み方」と「綴り方」の2教科を採り入れられないかと尋ねてみたところ、残念ながらあまり関心を示してもらえなかった。

 現在の日本人の「本離れ」の傾向がこのまま進めば、街から書店がなくなり、出版社もなくなり、日本の長い歴史と伝統に基づいた独特の日本文化も消え失せてしまうだろう。外国文学なども読まなくなり、外国の文化情報などについても表層的な知識ばかりになり、口先だけの議論展開となって実態を知らない空理空論が蔓延り出すのではないかと懸念している。そうなると「1億国民総じて政治家に」となる。心寂しいことである。

2024年8月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com