日本時間の今朝4時過ぎから始まったパリ・オリンピック閉会式を以て、盛会裏に行われた17日間の祭典の幕を降ろした。大会には32競技、329種目に1万5百人もの選手が参加した。開会式はセーヌ川を船で行進するという前代未聞の珍しい演出だったが、「華の都」パリを改めてPRできたのではないかと思う。閉会式は、フランス最大の陸上競技場スタッド・ド・フランスで行われ、ハリウッド俳優・トム・クルーズが屋根上からグランドへ降り、そのまま五輪旗を掲げたオートバイでパリ市内から空港へ向かい、次の大会会場ロスアンゼルスへ飛ぶという、稀なスケールの変わった趣向だった。
日本は、レスリングの最終日最後の試合で日本人男女選手がいずれも金メダルを獲得し、有終の美を飾ることができた。これで日本はアメリカ、中国に次いで金20、銀12、銅13、計45個のメダルを獲得したが、特に金メダルと合計メダルの数は、海外でこれまでに参加したオリンピックで最多である。中でもレスリングの金8個と、女子選手として初めて金を獲得した陸上フィールドやり投げの北口榛花選手は殊勲功と言えよう。
昨日は女子マラソンとレスリング最終試合を観ていた。パリは何度も訪れているので、知った場所や建物を選手が通る度に懐かしさを覚えた。日本からは前田穂南、一山麻緒、鈴木優花の3選手が出場予定だったが、前田選手が右大腿骨疲労骨折により急遽欠場することになった。マラソン出走4度目の鈴木選手が終始先頭集団に付いて見事6位入賞を果たした。残念ながら一山選手は、東京大会では8位入賞だったが、今回は先頭争いには加われず51位だった。パリ市内のコースは石畳で転倒に気をつけなければいけないが、全般的に起伏の多いコースで、往路20㎞辺りの急峻な下りと上り坂は、最大の高低さが156mで選手たちも苦しそうだった。
その他に今大会で感じたことをいくつか挙げてみる。
①開会式のフランス文化の洗練さがあか抜けている反面、マリー・アントワネットが収監されていたコンシェルジュリー傍をボートが通る時に、ビルのベランダに首のない女性が手に首を持って居並んでいたグロテスクな演出はいただけなかった。
②2,400億円をかけてセーヌ川を洗浄して遊泳が可能と前宣伝していたが、トライアスロン選手の中に帰国後体調不良を申し出た選手が何人かいた。1世紀以上もの間水質汚染で遊泳を禁止していたのを、いかに洗浄したとは言え、そう短期間には水は清浄にはならないだろう。
③陸上競技選手の胸からゼッケン番号が消え、胸には名前が書かれていて国名が分かり難かった。
④「礼に始まり、礼に終わる」と言われる柔道の礼儀作法が、かなり乱れ軽視されていた。審判の判定にも首を傾げるところが多かった。これからどうするのか。
⑤柔道かレスリング?の試合中に時計が停まったスタッフの不注意に対して、ビーチ・パレ―決勝戦・ブラジル対カナダ戦で選手同士がののしり合い、殺伐とした空気の中にスタッフがビートルズの♪IMAGINE♪のBGMを流して、試合会場を和ませた機転の利いた対応
⑥食事、エアコン不調などで選手に悪評だった選手村
などが幾分気になった。
それでも大過なく2週間余に亘った世界的スポーツの祭典を終えることができた。私が初めてオリンピックを意識したのは、1952年ヘルシンキ大会で、あの時金メダルはレスリング・バンタム級で石井庄八選手が獲得したたった1個だけだった。それが今20個になった。これからもオリンピックは発展し、日本選手は一層活躍することだろう。また、4年後を楽しみに待ちたい。それまで元気でいられるだろうか?