6199.2024年8月2日(金) 男女共学化反対の本音とこだわり

 静かなる波紋である。今教育界で人格形成から男女共同参画社会構想が進められている一方で、それに反する制度が今も残されている自治体がある。公立高校の男女別学制度である。独自の教育理念のある私立校は別にして、公立校の3年間を在校生が男女どちらかだけにしか認めないということは男女共同の理念に反するとして、近年男女共学化の傾向にある。今から60年前の1964年度は、全国の全公立高校のうち、男女別学の高校は13%もあったが、昨年度には全体の僅か1%にまで減少した。30年前には男女別学の高校が約20校あった福島県などは、県の有識者会議で「男女共同社会が進行するなか、共学化を逐次進めていく必要がある」と答申し、昨年度までにすべて共学化されたという。

 現在全国の公立高校の別学は、42校にまで減ったが、歴史と伝統という名の下に共学に踏み切れない自治体、高校があり、それは関東地方と西日本、九州地方に固まっている。中でも6校も別学がある群馬県と埼玉県が際立っている。

 特に埼玉県では、県立高校137校のうち、男子校が5校、女子校が7校もあり、その別学への拘りは教育委員会や学校側ではなく、保護者やOB・OGらが、多くの人材を育成している別学には素晴らしい校風や伝統があると強く訴え、むしろ共学化は生徒の選択肢を奪うと主張して別学化継続を要望している。過去に度々共学化への要望が県教委などへ寄せられていたが、近年埼玉県で再び大きな問題となっている。その経緯として、一昨年弁護士らで構成する県の第三者機関「埼玉県男女共同参画苦情処理委員会」に、県民から県立の男子校が女子の入学を拒んでいるのは不適切との苦情が寄せられ、同委員会は昨年早期に共学化すべきと県教育委員会に勧告した。02年にも同じような要望が寄せられた経緯がある。埼玉県教育委員会は今月中に報告書を公表するが、どんな結論になるだろうか、強い関心がある。埼玉県には昔名門の旧制高校があった伝統から、今もその郷愁が強いのではないかと推察する。

 因みに男子校の県立浦和高校と深い交流のある我が母校・神奈川県立湘南高校は、戦前は男子校で海軍士官養成学校とも言われたほど多くの卒業生が海軍兵学校へ進学していたが、1950年男女共学制となった。私が入学した1954年は、同学年生401人のうち、女生徒は僅か27人しかいなかったが、今ではむしろ男子より女生徒の方が多いくらい男女共学化が進んだ。埼玉県教育界にもそれぞれ学校、及び地域なりの事情があるとは思うが、長い伝統を誇る浦和高、浦和第一女子高、春日部高、川越女子高など共学化に反対の4校の同窓会長らは、公立校の別学も一つの選択肢として考えられるべきで、女子校の方が女子のリーダーを育てやすいと言う理由で共学に異を唱え、別学の維持を訴えているようだ。

 難しい問題ではあるが、共学反対を唱えている高校には、やや鳥瞰的に見る視点が欠けているように思える。男女共学の方が、長期的に見て教育面でプラスに作用すると思う。埼玉県教育委員会は、今月末までに一応の結論を出すことを求められているが、果たしていかなる決着をつけるだろうか。

2024年8月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com