アメリカ大統領選に現職のバイデン大統領が撤退を表明したことにより、民主党としてはバイデン氏の強い支持もあり、ハリス副大統領への支持が固まりつつある。8月に実施される民主党全国大会で最終的に民主党大統領候補者が決定されるが、一時はハリス氏に対する支持がそれほど高いように思えなかった。ところが、バイデン氏が無念の撤退を表明し、民主党有力者が団結してトランプ氏を再選させないことを強く訴えた。民主党有力議員らの間にハリス氏支持への動きが見られ、8月の全国大会ではハリス氏に勝る有力候補者が手を上げる雰囲気は薄くなってきた。民主党3,900人以上の代議員のうち、すでに2,600人以上がハリス氏への投票を決め、大統領候補の指名獲得に充分な支持を確保したとAP通信が報じたほどである。
ロイター通信が現時点でどちらに投票するかとの世論調査を行ったところ、ハリス氏39%、トランプ氏39%でほぼ拮抗した結果となった。これがバイデン氏撤退表明前には、バイデン氏36%、トランプ氏39%でトランプ氏がやや有利とされていた。トランプ氏がハリス氏をバイデン氏よりも楽に倒せるとあまりにも軽く見下していたところへ、民主党によるハリス氏支持で結束した効果が徐々に現れてきた。
翻って、この選挙戦について一般論としてどちらが勝利を収めた方が、国、また国際社会にとってプラスとなるだろうかと考えてみると、「ハリス氏勝利」と断言できる。トランプ氏は政治家以前にその人間性に信用を置けないことである。自分が不利だと知るとこれはフェイクだと受け入れず、公正な選挙において敗れると選挙に不公正が行われた結果だと選挙の結果を受け入れようとせず、自らの立場が常に正しいと主張する。女性との不倫などのスキャンダルは数限りなくあり、それが不利だと裏工作まで行って隠蔽し国民を騙そうとし、刑事、民事の裁判を多く抱えている状態である。国家の機密資料を黙って持ち出したり、連邦議会堂を襲撃するデモ隊を支援したり、国際的にも地球温暖化に反する一方的な「パリ協定離脱」や、国連が認めないイスラエルの首都エルサレムを、イスラエルと組んでテルアビブからエルサレムへ移転させたり、世界中から顰蹙と警戒の目で見られている。
これに対して、ハリス副大統領は、元検事だったせいもあり、清潔感と潔癖感に満ち、真っ当な主張を貫いている。相手を口汚く罵るトランプ氏とは異なり、正義感が強い。是々非々が明確である。アメリカ国内ではもとより、国際社会においても論理的なハリス氏の方がトランプ氏より受けは遥かに良いと思う。
アメリカで銃乱射事件が起きる度に、銃規制の問題が出るが、すぐに葬られてしまう。それほど西部開拓時代の空気が流れている実際のアメリカ社会では、これまで銃規制は憲法に認められているとの一項だけを頼りに、党の資金源である銃砲業界などに制約を課すことに後ろ向きだった。ハリス氏はこの空気に一部「待った!」をかけている。すでに前回大統領選前にヘイトクライム(憎悪犯罪)を計画している兆候がある人物の銃器へのアクセスを一時的に制限するよう求めてもいた。
協調というよりも日本がアメリカに譲歩し過ぎの傾向がある日米同盟も、ハリス大統領になればもう少し対等になるのではないかと思う。願わくば、人間的にとても信用ならないトランプ氏を蹴落として、何とかハリス氏に大統領になってもらいたいものである。